平成30年度は,平成29年度から引き続きサーミスタ素子の構造をそのまま利用し,素子周辺の流体媒質の変形を利用する静電容量変化方式の有効性を実験によって確認した.市販されている超薄型NTC型サーミスタ素子(10.0 kΩ@25 °C)と電極が直接流体媒質に触れるように先端をむき出しに加工し,それを高純度精製水(導電率1.0以下)で満たしたシリコンチューブ(外径3.8mm)内に挿入したものをセンサ素子とする. 今年度は,サーミスタ素子のシリコーンゴム内の設置方法を検討し,チューブ方向ではなく,チューブに切り込みを入れ,チューブと垂直方向から挿入することで配置方法の簡易化を行った.これによって複数のサーミスタをシリコンチューブ内に同じ条件で分布させる場合に有効な構造となり得ることが確認された.また,純粋以外の媒質として,シリコーンオイル,エタノールも試したところ,比誘電率が水と比べて小さく,静電容量の変化も著しく減少したため,センシング用媒質としては不向きであることが確認された. 小型環境試験機内に設置し,シリコンチューブの外径とセンサ素子全体の温度を変化させながらサーミスタの抵抗および静電容量の周波数特性(100 Hz~1 MHz)をインピーダンスアナライザを用いて取得した.実験結果より,サーミスタの抵抗測定および静電容量測定により得られた二つの信号から,サーミスタ周囲の温度とシリコンゴムチューブの変位を算出する二次元曲面関数を作成することで,温度および接触力を同時に得る可能性を確認した.これまでにサーミスタ単体でこのような使用例がないことから,特許出願を令和元年度中に行う予定である.
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