今年度は前年度得られた結果をもとにハンドヘルド型試作機のデモも含めた国際会議発表を行い、研究者からのフィードバックを得た。我々の研究室で行った実験の結果と相違なく、初めて装置に触った研究者の大半が問題なくアルファベットを読むことができた。装置を体験した研究者には母国語の文字がアルファベットである者とそうでない者がいたが、どちらも読むことができていた。今年度の研究の主要な進捗としては、単一のアルファベットではなく、単語を読ませることを意図した実装を行った。これは連続して提示される個別の文字を記憶し、単語として認識する必要があることからタスクとしては難度が大幅に上昇しているが、基本的な英単語に関しては十分に読むことができることが明らかになった。 また、筆記動作のみではなく、スマートフォンにおいて文字を入力する際の「フリック動作」の外力による再現をユーザの指先に対して行うことによって文字を読むことについても検討を行った。これは筆記動作に比して1文字当たりの提示時間がより短くなることを期待して行われた。実験の結果、筆記動作に比して格段に読み取りの速度を向上させることはできず、かつ正答率の点で運筆動作に劣るものの日本語の単語の提示は可能であることが分かった。これは筆記動作に比してフリック動作が直観性に欠け、意識的に運指と文字を関連付ける必要があったためであると結論付けた。総括すると、単一の文字の提示から単語及び文章の提示に研究を発展させるにあたり、基本的には実現可能であるが、実用上十分な程度でこれを達成するために解決すべき問題として、読み取り速度が遅い点、直観性が低いとパフォーマンスが大幅に下がる点が挙げられることが明らかになった。
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