研究課題/領域番号 |
15K12084
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
池田 聖 立命館大学, 情報理工学部, 任期制講師 (40432596)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 眼前符号化開口 / 事前鮮鋭化法 / HMD |
研究実績の概要 |
平成27年度は,(1) 眼前符号化開口を用いた提示像鮮鋭化法の開発,および(2) 注視位置を固定した実証システムの試作,を順に実施した. (1) 眼前符号化開口を用いた提示像鮮鋭化法の開発: (1-1)符号化開口形状の決定:Zhou らの手法を参考にして,眼前に設置し提示画像の鮮鋭化を行うために適切な符号化開口形状を検討した.HMDに適した開口径から幾つかの符号化開口形状に対して,その特性を調べた.符号化開口はプラネタリウム投影機用フィルムに印刷することで必要な制度と不透明性を達成し,鮮鋭化効果の確認ができた.具体的には,静止画,奥行きを固定した状態,平面対象という条件下で,符号化開口がある場合とない場合の比較を行い,小規模な被験者実験により有効性を確認した. (1-2) 目のPSFを考慮した提示像の鮮鋭化:鮮鋭化はL. Zhang and S. Nayarの手法を参考にする.網膜上の像は,提示像に符号化開口形状のパターンが畳み込まれただけでなく,実際は目本来のPSF も影響しており,この検討が必要であったが目のPSFの近似方法として等方なガウスカーネルを用いて被験者実験を行ったところカーネルサイズと奥行きが理論値に近いことを確認した.実験では,複数の奥行きにおいて目の焦点ボケとガウスフィルタによりボカした像とを比較した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究自体は概ね計画通り実施できたが,本予算で購入予定だったオートレフケラトメーターは,基盤Bの予算にて購入を予定していた視線検出器が大幅に安く必要な性能を満たす新機器の入手が可能であることが判明したので,予算枠の大きな基盤Bで購入することにし,より性能の高いものを入手した.そのため本予算は本年度その他の必要経費を執行するにとどめた.
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度は,(2) 注視位置を固定した実証システムの試作,を継続して実施し,(3) 被験者実験による被写界深度拡大の確認,を行う. (2) 注視位置を固定した実証システムの試作:実証実験のためのシステムを試作する.本システムでは,被験者の片目の前に符号化開口を配置する.この符号化開口形状に合わせて先鋭化された画像をディスプレイに表示した上で,注視ターゲットに注視させる.注視ターゲットは,ハーフミラーで鏡像を生成し,ディスプレイよりも奥,もしくは手間に結像するよう構成する.この状態で符号化開口がなければ焦点ボケが生じて見えないはずのディスプレイの像が視認できるかどうかを研究課題(3)の被験者実験により検証する.ディスプレイとしては,画素密度が網膜上換算で網膜の中心窩の分解能を超えるか近い高密度ディスプレイ(スマートフォンのディスプレイなど)を使用する. (3) 被験者実験による被写界深度拡大の確認:被験者実験では,上記実証システムにおけるディスプレイ上と注視ターゲット上に異なるパターンを提示し,両パターンが同種のものであるか否かを被験者に回答させる方法を検討している.パターンとしては様々な白布の表面のテクスチャを写真撮影し使用することを検討している.この理由は,カーテンのカタログなど生地の質感をサンプルと比較する類の作業に類似しており有用性を示しやすいこと,白い布であれば色による効果を今回の実験では無視できること,繊維の極めて細かいパターンが含まれており画像の鮮鋭化の効果が高いと予想されること,などである.他にも,人工パターン(チャープ信号),文書,顔,Hybrid Image3) などで試す予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究自体は概ね計画通りに実施したが,関連性の深い基盤Bの研究課題において購入予定であった機器が大幅に安く性能の良いものが入手できることが分かったため,計画を変更した.具体的には,本予算で購入予定だったオートレフケラトメーターは,基盤Bの予算にて購入を予定していた視線検出器が大幅に安く必要な性能を満たす新機器の入手が可能であることが判明したので,予算枠の大きな基盤Bで購入することにし,より性能の高いものを入手した.そのため本予算は本年度その他の必要経費を執行するにとどめた.
|
次年度使用額の使用計画 |
本研究課題では,高密度,高輝度のディスプレイを用いると効果を示しやすいが,反応速度や光沢性など,実際には幾つか購入して実験しないと分からないことも多い.当初従来の研究課題で購入したものを流用する予定であったが,上記予算執行計画の変更により生じた残額を利用して,こうした実験機器の拡充を図る予定である.
|