研究課題/領域番号 |
15K12090
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
井野 秀一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 人間情報研究部門, 研究グループ長 (70250511)
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研究分担者 |
高橋 紀代 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 人間情報研究部門, 外来研究員 (80296714)
布川 清彦 東京国際大学, 人間社会学部, 准教授 (90376658)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヒューマンインタフェース / ヘルスケア / 触覚 / 糖尿病 / 生活習慣病 |
研究実績の概要 |
本年度は、生活習慣病予防の健康セルフチェックを目的とした末梢神経障害の定量評価のための計測システム(触覚ヘルスメータ)の開発を行うと共に、感覚計測のデータ分析に着手した。システム開発では、計測システムの小型・軽量のための筐体デザイン等のハードウェア設計および直感的な検査に結びつく操作インタフェースのためのソフトウェア開発を進めた。また、計測プロトコルに必要な足底皮膚へのずれの機械刺激に関する物理的パラメータについて議論し、糖尿病性末梢神経障害の検査で利用される従来法(Semmes-Weinstein Monofilament Test)との比較検討を行った。その結果、この計測システムを使用した皮膚の水平方向へのずれ刺激による足底感覚の測定法とモノフィラメントを利用した従来法による測定データの比較分析から、両者で相関性の高い領域と低い領域が存在することがわかった。加えて、この相関性の低い領域の成因を探るために、従来法で利用するモノフィラメントの機械的特性を詳細に調べた。その結果、操作(押し付け)回数に比例してモノフィラメントの発生力が徐々に減少する現象が明らかになり、本手法と従来法の測定結果に相関性の低い領域(ばらつき)の生じる一要因である可能性が推察された。さらに、従来法と比べた場合、足底部でのずれ刺激で得られる閾値はとても小さく、皮膚の感覚特性を高精度に定量化できることが示唆された。また、ユーザビリティの観点から大切な測定時間については、手操作による従来法の検査に比べて、パソコンを利用した本手法が短時間であった。その他には、触覚技術との親和性の高い視覚障害者のための道具である白杖や末梢神経障害との関わりのある疼痛についても議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、皮膚知覚レベルに着目した末梢神経障害の定量評価のための計測システム(触覚ヘルスメータ)の研究開発をユーザビリティの視点を含めて展開すると共に、当該の計測システムを使用したずれ刺激による足底感覚の測定法に関する基礎データの収集および分析を行った。本手法は新規であるため、糖尿病管理の臨床現場で使用される従来手法との比較検討も併せて進めた.さらに、ヘルスケアの臨床現場等の触覚検査で利用されているモノフィラメントの機械的特性を定量的に明らかにし、糖尿病等で視覚障害のある人たちが日常生活で利用する白杖を介した感覚情報処理や末梢神経障害との関わりのある疼痛リハへの研究展開の芽も生まれた。以上より、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
生活習慣病予防の健康セルフチェックを目的とした触覚ヘルスメータの研究開発を、これまでに実施した基盤研究(システム開発および計測プロトコルのデザイン等)から得られた知見に基づいて積極的に展開し、国内外の学会や研究会等での成果発表と情報交換を行うと共に、健常者(若年・壮年)を対象にした足底皮膚知覚ベースライン策定のためのデータ収集、高齢者を含む年齢軸での評価、生活習慣病患者らに対するパイロット計測等の生体工学的研究について、ヘルスケアの現場との連携体制を十分に活用しながら医工連携で展開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者および研究協力者との研究打ち合わせに伴う旅費が、インターネット活用(ウェブ会議)等により少なく抑えられたことが挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
これらの金額と次年度以降に請求する研究費を合わせた使用計画としては、研究分担者および研究協力者との研究打ち合わせの旅費、国内外の学会および研究会等での成果発表、足底部等の末梢系の皮膚知覚特性を調べる人間計測とそのシステム構築に伴う物品費および謝金等として使用することを計画している。
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