研究実績の概要 |
本年度(平成27年度)は,棄却文塊のサンプルを集めるために,まず削除した文字や文字列を収集する機能を付加した簡単なテキストエディタを実装した.このテキストエディタを用いて,研究代表者の研究室に所属する学生達に,学会投稿原稿の執筆を依頼した.収集した文字(列)を調査・分析した結果,削除された文字(列)は,1)誤字の訂正,2)表現の修正,3)主題とは異なる内容の削除,の3種類に分類されることが明らかになった.本研究で主として求めているのは,このうちの第3のタイプの削除文字(列)である. 一般に,第1と第2のタイプの削除文字(列)は,数文字程度と短いことが多いのに対し,第3のタイプは数10字から100字程度と比較的長いことが多い.しかしながら,長さだけでタイプを判断することは難しく,精度よく第3のタイプの削除文字(列)を取得するためには,別の手段が必要であることが明らかになった.またテキストエディタは,全体的な内容がある程度固まった状態での文書執筆には適するが,本研究が対象とする,多様な視点での文章塊を作成したり削除したり並べ替えたりを高頻度に繰り返す,文書作成の上流工程で使用するには適していないことも明らかになった. そこで新たに,Nakakojiら[1]の研究を参考に,カードベースで文塊群を執筆し,これらの文塊を平面上で並べ替えて時系列を入れ替えたり,使用する/しないを決定したりすることを可能とする新規な文書作成環境を考案し,現在実装を進めつつある.基本機能はおおむね完成し,現在は再度研究室内での論文や研究計画提案書に適用して,その有用性を検証中である. [1] Nakakoji, K., et al.: Two-Dimensional Positioning as a Means for Reflection in Design, Proc. Design of Interactive Systems, ACM Press, pp. 145-154, 2000.
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