研究課題/領域番号 |
15K12099
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
大川 剛直 神戸大学, システム情報学研究科, 教授 (30223738)
|
研究分担者 |
大山 憲二 神戸大学, 農学研究科, 教授 (70322203)
太田 能 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 教授 (10272254)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | インタラクション情報 / 測位 / 放牧牛 / 時系列データ / 俯瞰画像 / ネットワーク分析 / コミュニティ抽出 / スマート農業 |
研究実績の概要 |
本研究では、放牧牛に装着した電子タグから得られる牛の位置情報や、サイロ上に設置した定点カメラを用いて撮影した放牧場の俯瞰画像から、牛間のインタラクション情報を抽出し、これを発情検知などに利用する枠組みについて検討している。平成28年度の主要な研究成果は以下の通りである。 1. 牛間インタラクション情報の抽出のための位置情報取得手法の検討:インタラクション情報抽出のための基礎となる放牧牛の位置情報の取得に向けて、27年度に実施したGPSを用いた測位に加え、より消費電力が少なく、リアルタイムにデータ収集が可能なBLE(Bluetooth Low Energy)を利用した測位手法について検討した。その結果、正確な位置推定のためには,タグと基地局デバイスの個体差に起因する指向特性のばらつきに対する考慮(補正)が必要となることを実験的に確認した。 2. 俯瞰画像と曖昧な測位情報を相補利用した放牧牛の追跡手法の開発:放牧地に対する俯瞰画像をもとに、背景差分法に基づく牛の検出・追跡手法を開発した。特に対象としている入力画像に応じて適切な背景画像を膨大なデータベースの中から逐次的に選択・利用することにより、検出精度が向上することを確認した。さらに、牛の行動における特徴的な軌跡を発見し、これを積極的に活用することにより、俯瞰画像から抽出された牛領域と無線デバイスなどにより得られる牛の位置データを対応付ける手法を開発した。これにより、コミュニティ抽出のために必須となる牛の個体識別を実現するとともに、測位データの誤差を画像上における追跡データに基いて補正することを可能とした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載したインタラクション情報に基づくコミュニティ抽出に関しては、既に平成28年度より継続的に実施しており、コミュニティの情報を活用することで、発情検知精度が伝統的な手法に比べて向上することを実証している。一方、無線通信によるインタラクション情報の取得については、現時点では十分な精度を得るには至っていないものの、BLEタグを利用した測位方式の開発を進めており、予備実験を通じて、精度向上に向けての指針を明らかにしている。以上より、概ね計画通りの進捗状況となっている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究方策として、BLEタグを利用した位置測定方式の実現に向けて、最適な基地局配置の検討が挙げられる。特に、異なる指向特性を持つ複数のアンテナを組み合わせることにより、放牧地全体を効率的にカバーできることが期待でき、そのための設計指針について明らかにする。また、俯瞰画像の利用に関しては、より精度の高い牛領域の抽出・追跡方式の開発を進めるとともに、測位データとの連携利用により、詳細なインタラクションの変化を捉え、牛の状態把握の観点から、インタラクションの変化の意味付けを試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
牛に装着する電子タグのいくつかに関して、未発売の新型タグの導入を計画したこと、ならびに、学会での研究成果発表を、一部、平成29年度以降に行うことになり、次年度使用額が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
電子タグに関しては、発売後、速やかに導入し、実験に利用する。また、29年度の研究費と合わせることにより、いくつかの会議での学会発表や論文発表を行う。また、俯瞰画像カメラを、より高解像度なタイプに更新する。
|