本研究では,大規模なネットワーク分析のための協力ゲーム理論の構築を目的として研究を行った.協力ゲームは,複数のエージェント協力関係 (提携) の形成方法や提携内での利得の配分方法に関する理論である.現在,ネットワークの巨大化,複雑化に伴い,ネットワーク内での協力関係,中心性,各人々の影響力などの解析が重要となっており,協力ゲーム理論の応用が期待できる.しかしながら,協力ゲーム理論においてゲームの記述方法,特に,エージェント間で外部性を有する場合のゲームの記述方法がボトルネックであった.そこで,本研究ではグラフ表現技法やデータ構造を用いた効率的な論理関数の処理技法を応用し,エージェント間の関係性を考慮した,効率的に記述可能な新たなゲームの記述方法に基づく,協力ゲーム理論の再構築の検討を行った.最終年度は,提携間に外部性が存在する場合を対象にした分割関数ゲームの簡潔なグラフ表現法を利用し,提携構造形成問題を効率的に解くアルゴリズムの提案などを行った.本研究は,国内の人工知能関連の学会である人工知能学会での発表,マルチエージェント関連の会議である合同エージェントワークショップ&シンポジウム (JAWS2016) での採択及び優秀論文賞の受賞,人工知能関連の難関国際会議のAAAI Conference on Artificial Intelligence (AAAI-17) にてstudent poster採択などの成果を挙げることができた.
|