研究課題/領域番号 |
15K12102
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
平田 耕一 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (20274558)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アンチバイオグラム / 伝搬パターン / 感染伝搬パターン / 検査材料 |
研究実績の概要 |
アンチバイオグラムとは,検出菌に対する薬剤の感受性検査結果を集約したたデータである.本研究では,このアンチバイオグラムからのパターン発見として,2次元キャリアマップの原理を拡張した同一菌株の推定手法を考案し,その手法に基づき,一定の期間内に出現する同一菌株のレコードの組を伝搬パターンとして定式化した.特に,患者が異なり,病室もしくは主治医が同一となる伝搬パターンを,院内感染の要因の一つと考えて,感染伝搬パターンとして着目した.そして,アンチバイオグラムから全検出菌に対するすべての伝搬パターンを抽出するアルゴリズムを設計し,実装した. そして,そのアルゴリズムを実際の大阪府立急性期・総合医療センターから提供されている1997年から2007年のアンチバイオグラムに適用した.レコード数は31,300である.その結果,伝搬パターンは期間の変化に関してほぼ線形時間で抽出することができた.実際の計算時間は,最短期間の5日間で7秒程度,最長期間の30日で12秒程度だった. また,抽出された伝搬パターンを解析したところ,伝搬パターンに占める感染伝搬パターンの割合は,期間とはほぼ独立であった.特に,最頻出となった12種類の検出菌のうち,肺炎球菌を除く11種類の検出菌における伝搬パターンに占める感染伝搬パターンの割合は概ね2-5%であったのに対して,肺炎球菌は15%程度と非常に高くなった. また,伝搬パターンにおける検査材料の推移についても解析した.その結果,最頻出だった黄色ブドウ球菌とその次に頻出だった緑膿菌では,喀痰から膿汁への推移が最も多かったがその割合は10%以内だったのに対して,肺炎球菌では呼吸器粘膜から喀痰への推移が最も多くその割合も15%以上であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予兆探索と薬剤感受性解析の融合によるアンチバイオグラムからのパターン発見の課題のうち,薬剤感受性解析によるアンチバイオグラムからのパターン発見について一定の研究成果を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,伝搬パターンの詳細な臨床医学的解析と共に,レコードの組としての伝搬パターンをより汎用性がある形に拡張すると共に,それを高速に抽出するアルゴリズムを開発する.また,院内感染の予兆探索の手法を開発すると共に,その手法と伝搬パターンを融合することで,新たなパターンを定式化し,それを高速に抽出するアルゴリズムを開発する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,成果発表の場として,国内開催の国際会議を選ぶことで出張費を節約したため,および,パソコン等は既存のものを使用したため高価な物品費の支出がなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
可能であれば海外で開催される国際会議で成果を発表する予定である.また,パソコン,タブレット端末,電子ペーパー,ソフトウェアなど,更新すべき物品や必要となる新規物品を購入する予定である.
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