研究課題/領域番号 |
15K12111
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
秦 重史 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (70735927)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 複雑ネットワーク / パターン形成 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き,マルチプレックスネットワーク上の反応拡散系における拡散誘起不安定化に関する研究を行なった. マルチプレックス系を含めた一般のネットワーク上において,チューリング不安定化にともなってパターンが生じるが,不安定化が超臨界的である場合,現れるパターンは系の拡散過程を記述するラプラス行列の固有ベクトルで記述される.また,不安定化が亜臨界的である場合であっても,初期段階において形成されるパターンは,ラプラス固有ベクトルを用いて説明することができる.以上のように,ラプラス固有ベクトルはネットワーク上のパターン形成ダイナミクスと密接に関係しており,その性質を明らかにすることは,ネットワーク上のパターン形成を理解する上で非常に重要である. 本年度は,このラプラス固有ベクトルの示す局在性について研究を行なった.ラプラス固有ベクトルが局在性を持つことは,多くのネットワークに関する数値計算により確かめられており,所謂普遍的な性質であると見なされているが,未だその起源は明らかにされておらず,どのようなクラスのネットワークにおいて局在性が現れるか明らかではない.これを明らかにするために,本年度は,摂動理論に基づき,ラプラス固有ベクトルの近似評価を行なった.その結果,局在性の起源を理論的に説明することに成功した. また,同内容を論文にまとめ英文学術雑誌に投稿するとともに,国内外における各種会議で報告を行なった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,系の不安定化にともなって形成されるパターンの統計的性質を明らかにする予定であったが,ラプラス固有ベクトルの解析を通して,これを概ね達成することができたと認識している.
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今後の研究の推進方策 |
不安定化の臨界特性に関する解析は,当初,解析計算をとおして行なう予定であったが,やや困難であることが明らかになりつつある.このため,数値計算をとおして上記を行なうことを検討している.
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議参加のための旅費を計上していたが,参加を予定していた国際会議と他の学会の開催期間が重なったこともあり,参加を見合わせることになり,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
前年度に参加することができなかった国際会議は本年度も開催されるため,これに参加するための旅費とする.また,他の経費に関しては予定通り執行する.
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