研究課題
平成27年度では,(1)少人数ロボット対話環境の開発,(2)対話における生理指標の分析と療育課題の分類の研究に取り組んだ。(1)では,少人数対話環境を構築するための,遠隔対話ロボットシステムを構築した.具体的には,脅威の対象となりにくい外見を持つ小型卓上型ロボットや人間そっくりな外見を持つアンドロイドを端末とし,遠隔操作者がロボットを設置した部屋の様子をモニターで視聴しながら,端末に文字列をタイピングすることにより,その合成音声をロボットのスピーカから口の動きとともに生成させたり,画面上のボタンのクリックにより,あらかじめ登録しておいた対話中にロボットに生成させたい発話・行動を生成させることで,ロボットと対面する者と対話できるシステムである.予備実験として,養育者が遠隔操作者となって,本システムを使用してASD児と対話する際の養育者側の使用感を評価させるとともに,ASD児がロボットと対面して対話する様子を観察し,本システムを用いることで,双方とも負担感の少ない対話ができる可能性を見出した.またASD児を遠隔操作者として,養育者と対話させる予備実験を実施し,何名かの児において,ロボットを介した形態をとることで,普段と比して,コミュニケーションの質の改善する点があったことが認められた.(2)では,ロボットとの対話時のストレスの分析に関して,ロボットと対話時にASD者から取得できる生理指標および視線による行動指標を測定する予備実験に取り組んだ.生理指標として対話前後のコルチゾールを用いたストレス評価および主観的評価では,予備実験を実施し,実験デザインの構築に取り組んだ.並行して,行動指標に関して,ASD青年と人間に酷似したアンドロイドと交互に対話させたときの視線追従を評価し,ASD青年は人との対話時に比べ,ロボットとの対話時に指標の改善を見せる可能性を報告した.
2: おおむね順調に進展している
H27年度では,本研究のコアとなる,ロボットを用いた遠隔対話システムを開発するとともに,予備実験に使用し,そのインターフェースが実際にASD者とその養育者の対話を実現に耐えるものであることが確認できている.また,その操作者による使用感や,対面者のストレス評価に関する予備実験を,本システムの導入を計画しているフィールドで行うことができており,導入に関する予備実験も同時に着手することができている.一方で,その評価は充分でなく,最終年度では,今年度構築したシステムおよび実験フィールドを用いて,その実現に向かって研究を加速していく.
おおむね順調に研究は進んでいる.今後は,今年度構築したシステムをさらに改良し,自閉性スペクトラム障害児が通う病院,支援学校などの協力を得て,コミュニケーション支援の実現に向けて,いっそう力を入れていく.
ロボットの遠隔対話システムは当初、音声入力をベースとすることを予定していたが,タイピングが予想以上に効果的であることが分かったため,タイピングをベースとする遠隔操作のインターフェースの使用感を,フィールドでの使用に耐えるものに引き上げることに注力する必要が生じた.それに伴い,遠隔対話システムで使用するロボットの台数を増やすための開発を次年度に回すこととなった.これに伴って,今年度廃部額の一部を次年度使用額とすることにした.
次年度使用額とH28年度配分額とを合わせ,複数体のロボットを用いた遠隔対話システムの開発に必要な物品購入に充てる.また,一部は,実験のランニングコスト,また評価実験のための研究スペースの借用料に充てる.
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Human Developmental Research 2015
巻: 29 ページ: 169-174
整形・災害外科
巻: 58 ページ: 1057-1061