研究課題
平成28年度では,(1)の課題の成果である,平成27年度中に構築した,キーボードとマウスを用いた遠隔対話ロボットシステムを用いて,自閉症スペクトラム障害者の対話における(2)生理指標の分析と療育課題の分類の研究と,(3)対話形態のスケジューリングによる療育の研究に取り組んだ.(2)の生理指標に関して,アンドロイドを相手としたASD者の面接の繰り返し練習において,コルチゾール(ストレスの生理指標)と自己評価を測定する実験を実施し,3日間の連続練習を経て,人に対する面接時のコルチゾールと自信の改善を認めた.また2体の小型ロボットを用いて,定評のあるアセスメント法であるADOSの診断過程の一部を自動化し,健常者と発達障害者の間に,ロボットへの反応の違いを認めた.これはASDの診断技術として少人数ロボットとの関わりを用いる可能性を示唆するものであり,ロボット用いた療育課題の分類法の開発につながる結果であると考えられる.(3)の対話形態のスケジューリングに関し,未就学児を対象に,人,ロボット,人,と対話相手を変遷することで,ASD者においてロボットへの応答の容易さがみられるか否か,またそれが人の視線への反応につながるか否かを調査する実験を実施した.実験結果は被験者数の増加が今後の課題であるものの,ASD者においてロボットへの応答が人と比べて促進されること,またロボットへの応答を経験した群のASD者において,その後の人への反応が促進される可能性を示唆した.また,青年を対象に,遠隔操作されるロボットを含んだASD者・養育者・ロボットの3者対話実験を実施し,3者対話を経ることで,ASD者・養育者の間の対話の促進を認めた.これらの結果は,ロボットとの直接対話,あるいはロボットを含む少人数対話を経ることが,ASD者の周りの人との対話の効果的な療育となる可能性を指示するものと言える.
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 6件)
Scientific Report
巻: 6 ページ: 1-8
doi:1-/1-38/srep39718
通信ソサイエティマガジン B-plus
巻: 39 ページ: 179-185