研究課題/領域番号 |
15K12119
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
清水 正宏 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (50447140)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | アフリカツメガエル / 生体・機械ハイブリッドシステム / 遊泳運動 |
研究実績の概要 |
本研究では,優れた遊泳能力を有するアフリカツメガエルに着目し,このカエルの生体筋で駆動されるロボットによる遊泳運動能力の実現を目的とする.ロボットは,カエルの後脚の筋骨格構造を再現し,この生体の遊泳時に主要に駆動される排腹筋を駆動源とする.その結果,作製したロボットによる,生体の運動機能の実現を達成し,その遊泳能力に対する生体力学的評価を行うことを主な目的とする.また,この研究ので培った技術を一般的なロボットにおける生体筋の利用のための布石にすることも大きな目的としている. 平成27年度は,カエル遊泳を再現する生体・機械ハイブリッドシステムの開発を行った.アフリカツメガエルを生体力学的に再現する生体・機械ハイブリッドシステムを構築した.ここでは,まず,坐骨神経-腓腹筋の等尺性張力特性評価を行った.筋肉を任意に駆動させる方法として電気刺激を採用した.筋組織と坐骨神経を同時に取り出し,坐骨神経に電気刺激を印加した.次に,生体筋を骨格構造に実装する遊泳ロボットの設計を行った.ロボットの後脚をアフリカツメガエルの生体力学的特徴と一致するように設計した.骨格は,足と胴体との接続部分である腸骨と坐骨を一体とみなした体幹,大腿骨,腔排 骨,そして,距骨,中足骨,足指骨の3つを一体とみなした足ひれ部分を再現した.足ひれ部分は,距骨と中足骨と足指骨を一体とみなし,中足骨と足指骨の関節を再現した.これにより,腓腹筋を生体と同じ場所にそのまま実装することができた.そして,生体筋の骨格構造への実装を行った.坐骨神経に電気刺激を印加するための電極として,サクション電極を採用した.遊泳に実装するために,ロボット身体の内部にサクション電極を封入した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度には,アフリカツメガエル型の生体・機械ハイブリッドシステムを開発した.これは,当初予定していた当該年度の達成目標を順調に遂行していることを意味する.また,遊泳運動を評価し,生体筋が生理学的・物理学的に適切に使われることによって高い遊泳能力を示すことが明らかとなった.現在,論文の執筆を進めている.以上から,現在までの進捗状況がおおむね順調に進展していると判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度には,生体力学的評価と知能機械システムとしての高度化を行う.前年度に完成させた生体・機械ハイブリッドシステムを様々な環境で評価し,改良することで,アフリカツメガエルの適応的遊泳のメカニズムを解明する.また,遊泳時における股関節,膝関節,足首関節軌道の評価を行う.生体の遊泳時の運動学的データをハイスピードカメラで計測し,構築したロボットと比較する.また,流体力学的評価のために,DPIV(可視化画像流速計測)システムによって,筋骨格構造の働きと流体力学的影響の関係を明らかにする.さまざまなロボットに実装可能とするための生体筋の工学的汎化を行う.本研究における生体筋の制御技術は,カエル型ロボットのみならず,ロボットアーム機構など,他の一般的なロボットのための生体筋の制御技術としても利用できることが期待される.
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度には,アフリカツメガエル型の生体・機械ハイブリッドシステムを開発した.当該年度においては,アフリカツメガエルの生体メスを実験のために購入した.基礎的な実験が中心的であったため,次年度使用額が生じた.
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の基礎的な実験結果に基づき,平成28年度では,応用的な研究としてロボットの製作を多数行う.このため,今回生じた次年度使用額と,翌年度分として請求した助成金と合わせた額を使用する計画を立てている.
|