本研究の目的は、ヒトの嗅球と眼窩前頭葉皮質の活性状況を観測することで、匂い物質を検出する方法の可能性を検討することである。外部から嗅球にヘモグロビンの吸光度の高い光をあて、反射光による吸光度の測定をすることで、嗅球内の細胞の活性度を測定し、匂い物質の検出を行うものである。研究では、ヒトの嗅球と頭部をモデル化し、光伝播のシミュレーションプログラムを作成し,光散乱現象のシミュレーションを行った。その結果、数ワット程度のLEDで充分反射光を得ることができること、分解能は1mm程度であることが分かった。次に、頭部と嗅球内の血管を模した実験装置を作り、実際にLED光とレーザ光を用いて計測を行った。その結果、ヘモグロビン(酸素付加の有無)に対して十分な反射光と吸光度の測定ができた。さらに、頭部組織内での近赤外光の平均光路長と検出点における光強度を推定し,脳活動計測装置を設計する際の指標が得られた。我々が先に開発しているヘモグロビン吸光度を利用した光センサーを利用して嗅球の発火パターンを測定することができた。実験結果より、吸光度とその位置情報よりニューロネットで学習させ、発火パターンより匂い物質と濃度の同定を行う可能性を示すことができた。
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