研究実績の概要 |
本年度は、本研究の目的である金色知覚の特異性の有無の解明のために、光沢弁別と視覚探索の心理物理実験と脳波計測実験を行なった。光沢弁別実験では、刺激として、3D-CGを用いて4色、(x, y)=赤(0.397, 0.311)、黄(0.424, 0.430)、緑(0.250, 0.412)、青(0.211, 0.286) の刺激物体を作成した。形状として、金平糖、赤血球、ポットの3種類、参照刺激の鏡面反射率としての光沢度を5レベル用いた。4個の刺激(同色あるいは異色)の中の1個の刺激に増分光沢度を付加し,被験者は増分光沢度の刺激を検出するという方法で,4AFCの恒常法により光沢弁別閾値を測定した。その結果、同色定時の場合は、参照刺激の光沢度レベルにかかわらず、金色の光沢度閾値は他の刺激色と差があることは認められなかった。異色呈示の場合は、色度による違いはあるが、金色の特異性は見られなかった。 視覚探索実験では、刺激は光沢弁別実験と同様である。目標刺激として色度と光沢度の組み合わせが1通りの刺激を設定し(結合探索)、複数の妨害刺激の中から目標刺激を検出するまでの応答時間を測定した。刺激数としては、16、32、64個を用いた。目標刺激と妨害刺激の光沢度の差はパラメータとして設定した。結果として、金色刺激が他の色度刺激に比べて、差のある応答時間を示したという特異性は認められなかった。 脳波計測実験では、オドボール課題を用いて全頭からの脳波パターンを計測した。刺激は心理物理実験と同様である。光沢度が0の刺激を参照刺激として全体の80%呈示、光沢度が1の刺激をオドボール刺激として全体の20%呈示とした。その結果、金色刺激と赤色刺激間に差が見られた。 以上の結果から、金色知覚には、視覚系初期過程では特異性はないが、高次中枢レベルでは特異性があることが示唆された。
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