本研究は、ヒトが豊富な視環境の中から処理すべき対象物を抽出し、視線を向けるときに起こる輻輳眼球運動とサッケード運動を調べることにより、実世界環境下で対象物の存在を感じ、眼を向けるための視空間情報処理を明らかにしようとするものである。そのため、輻輳眼球運動とサッケード運動を計測するための高精度の眼球運動計測システムを新たに開発する。この高精度の眼球運動計測システムを用いて実世界環境下で被験者の眼から様々な距離に付置された対象物に視線を移す時の輻輳眼球運動をサッケード運動と同時に計測する。この結果を解析することにより、実世界環境下での視覚情報処理についての新たな知見を得ることを目指している。 これまで困難とされてきた実験者の指示を理解できない小児や動物(特にトレーニングの難しい動物、マーモセットなど)の眼球位置のキャリブレーションを容易に実施するため平成29年度に開発した手法を今年度はより精度の高いものとすることができた。特にマーモセットに用いた計測については、液晶画面にマーモセットの顔画像をスクリプトを使って提示、動かすことで、画像の提示と眼球運動の計測を同時に協調させ、実行することで校正データを自動生成することが可能となった。また平成29年度に開発した「アゴ台を離れて行動中の眼球運動を計測できるシステム」では加速度センサーを用いて頭部の動きを計測していたので精度が十分とはいえなかった。今年度は頭の位置の変化をより正確に計測するためヘルメットにマーカーをつけ赤外線光源で照明し、眼球運動の計測と同等の手法で位置の変化を高い精度で同時計測することに成功した。
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