研究課題/領域番号 |
15K12134
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
竹村 文 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 人間情報研究部門, 主任研究員 (90357418)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 追従眼球運動 / 眼球運動計測 / 意識 / 認識 / 無意識 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、常に見えている物理的刺激は同じなのに知覚される像が切り替わる「両眼視野闘争」の刺激を用いて、眼球運動を誘発し、認識(意識に上った視覚刺激)と自動化された運動(無意識)が、どのように影響し合っているのかを追求することである。そのために、初年度はヒト実験システムを構築し、連携研究者とともに、高精度な眼球運動計測システムを開発した。時間的にも空間的にも精度の高い両眼の眼球運動計測システムであり、独自のアルゴリズムによって、サンプリング周波数:500Hz(時間解像度2ミリ秒)、精度:0.2 度以下で両眼計測を同時に行い眼球の動きを検出できる。 当該年度は、眼球運動を引き起こすのに適切な視覚刺激の検討を計画した。眼球運動を誘発する両眼視野闘争の刺激を作成したが、誘発される眼球運動が非常に小さく、実験パラメータを決定するに至っていない。心理物理学的に、2フレーム・ムービーを用いた視覚刺激では、特定の条件で、動きの知覚が反転する。タイヤの回転が、実際の回転方向と逆方向に知覚されるのも、この現象によるものだ。現在、この動きの知覚を反転させる2フレーム・ムービー(眼視野闘争の刺激ではないが、実際に与える視覚刺激の運動方向と知覚にのぼる運動方向が反対になるような刺激)を作成し、追従眼球運動を誘発することが出来た。さらに、誘発された眼球運動も反転することも明らかにした。また、意識に上らない運動学習について論文化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
両眼視野闘争を引き起こす視覚刺激で眼球運動を誘発するには、問題点がある。その問題を解決するために、視覚刺激の呈示時間関係や呈示方法を工夫する必要がある。 刺激と知覚の乖離をひきおこせる「両眼視野闘争」は、有用な視覚刺激ではあるが、適切な両眼視野闘争を引き起こすには、呈示している視覚刺激が小さい(視野角1度程度)である必要がある。視野角の大きい視覚刺激を使おうとすると視野のあちこちで視野闘争が起きるため、視野の一部には右眼呈示像が、別の部分には左眼呈示像が見えるようになる。 追従眼球運動を誘発するには、より広い視野が動くと大きな眼球運動が誘発されるため、本研究で誘発される眼球運動が非常に小さく実験パラメータを決定するに至っていない。そこで、心理物理学的に、動きの知覚が反転する2フレーム・ムービーを用いることを考えた。この刺激によって眼球運動を誘発させ、誘発された眼球運動も反転することを明らかにした。また、産総研実験施設集約化のため、当該実験を行っている実験室を移設したため、実験を停止せざるを得なかった間、意識に上らない運動学習について論文化した。
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今後の研究の推進方策 |
両眼視システムを構築して実験パラメータを今後も検討する一方で、動きの知覚が反転する2フレーム・ムービーを用いて、さらに初期視覚野の情報処理を明らかにする方針である。2フレーム・ムービーを用いた研究においても、最終的には、知覚と運動の関係を詳細に明らかにする研究につなげていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
時間解像度の高い高精度な眼球運動計測装置を開発するとともに、眼球運動を誘発する視覚刺激として「両眼視野闘争刺激」の作成を試みた。しかし、誘発される眼球運動が非常に小さく、実験パラメータを決定するには未だに至っていない。また、産総研実験施設集約化のため、当該実験を行っている実験室を移設したため、実験を停止せざるを得なかった期間があった。
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次年度使用額の使用計画 |
大きな物品を購入する計画はないが、視覚刺激によって生じる眼球運動はヒトより、実験動物であるサルの方が大きい。そのため、視覚刺激を検討するためにサルの行動実験を並行して行うために、サルの実験セットアップのための消耗品として用いる予定である。
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