キンカチョウ脳切片からラマンスペクトルを取得後、同一切片に対し、ミエリン染色およびセロトニン作動性神経、ドーパミン作動性神経、GABA作動性神経検出のための蛍光免疫染色を行った。スペクトル解析では教師なしクラスタリング分析として主成分分析、独立成分分析、教師あり学習では、サポートベクターマシン、決定木、ニューラルネットワーク等を用いた。その後スペクトル情報から組織・細胞構築の調査が可能であるかを検討した。 ミエリンについてスペクトルを取得後、主成分分析を行い、PC1とPC2のスコアをプロットした。k means法を用いて3群にクラスタリングし、それぞれのクラスターごとに色分けしたところ、ミエリン染色で染まる領域をスペクトル情報だけで抽出することに成功した。また異なる神経伝達物質(セロトニン、ドーパミン、GABA)を持つ3種類の神経細胞の自動識別をラマンスペクトルにより可能であるかの検討を進めた。3種の神経細胞に対し、主成分分析を行い、蛍光輝度と主成分スコアで散布図を作成したところ、セロトニン作動性神経とドーパミン作動性神経はPC1、GABA作動性神経はPC4で相関は高かった。また、教師あり学習を行ったところ、セロトニン作動性神経とドーパミン作動性神経では85%以上、GABA作動性神経においては約65%の精度で識別できた。GABA作動性神経の精度が多種の神経細胞より精度が低い理由としてGABA濃度がそもそも低いことが考えられる。セロトニンやドーパミンでは100μMで検出することができるのに対し、GABAのスペクトルは0.5 Mよりも高濃度でないと検出できないスペクトルのピークが存在した。このことがGABAの検出を困難にしているものと考えられる。 また我々は核染色像から脳領域をボロノイ分割により一意に分ける手法を確立し、合理的に脳地図を作成する手法を確立した。
|