本研究は、実験物理で有効な定量化の方法を応用して、生化学反応ネットワーク理論と実際の細胞画像の相違を光子数単位で埋める新しい試みである。平成27年度は、全反射顕微鏡とレーザー走査型共焦点顕微鏡の観測プロセスを「重ね合わせの原理」従って光子数単位でモンテカルロ・シミュ レーションを実行できる計算システムの構築することが主な課題としていた。シミュレーションの結果は、設定した変数値が反映された計算画像がアウトプット として生成される。平成28-29年度は、2つ応用例を示すことを課題としていた。 一つ目の「全反射顕微鏡法のシミュレーションを使った一分子追跡法の精度検証」の課題を実施した。具体的には、(1)「 細胞モデルの構築(HRG-ErbB受容体の 二量体モデル)[Hiroshima et al. PNAS (2012)]」(2) 「イベントを区別するための選択アルゴリズムの構築」(3) 「一分子追跡法による解析の精度の計算」を 実施した。結果は、論文としてまとめた。 2つ目の「レ ーザー走査型共焦点顕微鏡のシミュレーションを使った画像相関法の解析精度の計算」の課題を実施した。 具体的には、(1) 「細胞モデルの構築(シンプルなものに留める)」(2) 「画像相関法による拡散係数の解析の精度計算(感度解析)」を実施した。しかし、研究の途中段階で、細胞内構造がモデルに組み込まれていないと、解析結果に大きな違いを見出せないことがわかった。
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