研究課題/領域番号 |
15K12150
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
土方 嘉徳 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (10362641)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 推薦システム / パーソナリティ / O-I-Pモデル / Big Fiveモデル |
研究実績の概要 |
今年度は,ソーシャルメディアと推薦システムにおけるユーザ行動とパーソナリティの関係について調査を開始した.推薦システムはデータの入力,嗜好の予測,そして推薦の提示の三つのプロセスで推薦を行う.これは,O-I-Pモデル(Output-Input-Process model)と呼ばれる.我々は,O-I-Pモデルの最初のプロセスである「データの入力」におけるユーザの行動と,パーソナリティの関係に焦点を当てた.データの入力のプロセスでは,ユーザのパーソナリティによって評価値の揺らぎ(同じアイテムに対して,一定時間経過後に再評価させたときの評価値の違い),評価値の偏り(評価付けのスケールにおける偏り),評価付けの量,評価値の分散,そして評価付けにかかる時間の5つの項目がそれぞれ異なると思われる.我々はパーソナリティを定量的に扱うモデルとして,実用的で信頼性の高いBig Fiveモデルと呼ばれる既存のモデルを利用した.このモデルは,パーソナリティを5つの因子で表現する.それは,Neuroticism(神経症傾向),Extraversion(外向性),Openness to Experience(開放性),Agreeableness(調和性),そしてConscientiousness(誠実性)の5つである.つまり本研究では,データの入力のプロセスにおける5つの項目と,ユーザのパーソナリティにおける5つの因子の関係を調査した.調査の結果,ユーザのパーソナリティは評価付けのために閲覧するアイテムの量や評価値の偏りと相関があることが確かめられた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は,ユーザ行動とパーソナリティの関係を調査するにあたって,ユーザのプロフィール画像に注目した.すなわち,ユーザがプロフィール中の画像(以降,プロフィール画像)に何を設定しているのかについて調査を行った.なぜならユーザはユーザの内面にある心理(ユーザの興味や嗜好も含む)が,画像の選択に影響を与えていると考えたからである.この調査によって,ユーザが設定するプロフィール画像により,ユーザ行動が大きく異なることが分かった. 今年度は,この実験結果を踏まえて,本格的にソーシャルメディアと推薦システムにおけるユーザ行動とパーソナリティの関係について調査を開始した.具体的には,推薦システムのO-I-Pモデル(Output-Input-Process model)におけるユーザの入力のプロセスにおいて,ユーザのパーソナリティとユーザのアイテムへの評価付けの行動の関係を調査した.パーソナリティについては,Big Fiveモデルを採用し,Neuroticism(神経症傾向),Extraversion(外向性),Openness to Experience(開放性),Agreeableness(調和性),そしてConscientiousness(誠実性)の5つを取り上げた.ユーザの評価付けの行動としては,評価値の揺らぎ,評価値の偏り,評価付けの量,評価値の分散,評価付けにかかる時間を取り上げた.ユーザのパーソナリティの5つの因子とユーザ行動について相関分析を行った.その結果,神経症傾向の高い人は,評価の平均値が高く,低評価をつけない傾向にあることがわかった. 昨年度の実験結果を踏まえて,今年度はユーザのパーソナリティの取得とアイテムへの評価付けの行動ログの取得,それらの相関分析を行う予定であったが,それらを予定通り進めることができた.
|
今後の研究の推進方策 |
今年度でパーソナリティとユーザ行動に関する分析が大幅に進められた.しかし,筆者が想定していたほど,パーソナリティとユーザのアイテムの評価付け行動との間には相関がなかった.今年度の実験では,映画に対する評価付けを行ったが,この評価付けでは見たことがある映画に対して,好みの程度を7段階で入力するというタスクであった.見ていない映画に対しては,評価付けを行わずにスキップすることができた.このことから,タスクが単純すぎた可能性がある.実験中に取得した被験者へのインタビューの結果と合わせて,得られた実験結果を深く分析していくつもりである.
|