今年度は,推薦システムからの結果に対するユーザの知覚(特に信頼性に対する印象)についてと,パーソナリティの変化について調査した. 前者においては,ユーザへの推薦の提示方法として,推薦システムへの信頼感に関連しそうな表示形式,説明形式,ランキング方式の3種類の観点について,代表的な方式3種類を比較した.具体的には,表示形式に対しては,ジャンル別表示,人間のエージェントによる表示,ランキングによる表示の3種類である.説明形式に対しては,アイテム紹介用の説明,ユーザの過去の評価に基づく説明,他ユーザからの評価に基づく説明の3種類である.ランキング方式については,一般的な評価値順,多様化の順,リリース日順である. 被験者実験により,ユーザは各表示形式の推薦結果を受け,信頼できるかどうかを入力してもらった.上記の3種類の観点ごとに,3種類の方式との連関の有無を検証したところ,表示形式ではジャンル別表示,説明形式ではアイテム紹介用の説明,ランキング方式では一般的な評価値順がユーザの知覚する信頼性に最も寄与していた. 後者の調査では,ユーザの長期間に及ぶシステムの利用において,ユーザのパーソナリティが変化しないかどうかについて調査した.特にソーシャルメディアにおいてユーザが他のユーザから受けたフィードバックの量の変化と,ユーザのパーソナリティの変化に関係があるかどうかを被験者実験により調査した.パーソナリティとしては,実用的で信頼性の高いBig Fiveモデルと呼ばれる既存のモデルを利用した.調査の結果,他者からのレスポンスの増加と,神経症傾向の増加には,負の相関があることが分かった.また,その他のパーソナリティの指標についても,他者からのフィードバックとの相関が確かめられた.推薦システムにおいても長期の利用においては,パーソナリティの変化を考慮する必要があることが分かった.
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