研究課題/領域番号 |
15K12153
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
廣森 聡仁 大阪大学, 未来戦略機構, 講師 (90506544)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 高度交通システム |
研究実績の概要 |
本取組では,朝夕の通勤時に発生する渋滞に代表される日常的な交通状況を把握するだけでなく,事故に伴う渋滞や大規模なイベントに伴う通常時と異なる交通状況を,迅速かつ正確に把握することで,都市部における円滑な交通環境を実現することを目的とする. 本年度は,まず,都市部における交通流を把握するために,単独の交差点に留まらず,近隣に複数の信号機が存在する交差点において形成される車列の長さを求める手法を提案した.この手法では,対象交差点の上流に位置する信号機の状態に応じ,上流の交差点に接続するいずれのリンクから車両が流入するかを判断し,かつ,その流入期間に応じて,プローブカーの停止位置及び停止時刻から,前方に存在する車両数を把握するとともに,信号サイクル中に到着する車両数を予測する.これにより,ある交差点において推定した車列長に基づいて,さらに下流の交差点における車列長を推定していくことで,各リンクにおける交通量を把握する. また,交通状況の短期的な変化を把握することを目的とし,10分程度の短い時間粒度でOD 交通量を推定する手法を考案した.この手法では,上記手法により推定したリンク交通量に基づき,エントロピー最大化法によりOD 交通量を推定する.エントロピー最大化法で利用する事前OD分布は,観測されたプローブカーの走行経路の利用頻度に基づき算出し,各 OD組の経路に含まれる通行リンクについてもプローブカーによる通行実績がある経路から抽出する.交通シミュレーションによる性能評価を実施し,格子状の単純な道路網において,高い精度でOD交通量を推定できることを示した. これらの研究成果は,高度交通システム代表的な国際会議である IEEE ITSC 2015 (Intelligent Transportation Systems Conference) に投稿し採録された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は,単一の交差点を対象とした交通量推定手法を発展させ,互いに接続した複数の交差点の関連性を考慮することで,より正確に交通量を推定する手法を考案した.また,OD交通量を推定する手法の検討にも取り組み,交通シミュレーション上の性能評価において,真値との相関係数が高い推定値を導出できることを示した.実世界における性能評価については実施できていない一方,平成29年度に予定していたOD交通流推定手法について先行して取り組んでおり,研究は概ね順調に進んでいると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は,平成27年度に考案した交差点におけるリンク交通量推定手法,及び,OD交通流推定手法を対象とし,実世界における有効性を評価する.この取組に際し,いくつか異なる期間において交通量調査を実施し,リンク交通量とOD交通流の精度を評価する.平成27年度には,国土交通省により五年毎に実施される交通センサスが行われており,これらの結果も参考し性能評価を実施する.また,これだけでなく,地図データに含まれる店舗,バス停,学校などと交通流の関連を分析し,これらの関連性を考慮することで,より精度の高い交通流推定手法を実現する.
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次年度使用額が生じた理由 |
交差点における交通量推定手法の検討において,都市部において交通量調査を実施し,実世界における有用性を調査する予定であったが,先行して,平成29年度に予定していたOD交通流の推定手法に取り組んだ.いずれの手法においても,交通シミュレーションソフトウェアを用いた性能評価に留まっており,アルバイトによる交通量調査を実施しなかったため,次年度使用額に差が生じている.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は,平成27年度に実施できなかった交通量調査をアルバイトにより実施し,交差点における交通量推定手法とOD交通量推定手法の有用性を示す.
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