研究実績の概要 |
試験を実施することによって、その時点での受験者の学習到達度を把握することができる。しかし、受験者の行動としては、ややもすると得点と言う「数値の大小」に関心が集中してしまい、次の学習ステップとして、どの単元を習得するのが「より効果的なのか」と言ったところに興味を持たれない場合が多い。「得点」に加えて的確な「助言」を付与することによって試験の有用性が飛躍的に高まると期待できる。 この目的のためには、各設問の解答過程を分析・把握する(Task Analysis)ことによって、各受験者のつまずいている単元を特定することが可能となり、それを助言として提示することができるようになる。 このような学習診断の技術の一つとして、申請者らはRule Space Method(RSM, Kikumi K. Tatsuoka(2009))に注目し、その技術的問題点を明確化すると共に実装可能性を探ることとした。研究実施最終年度である本年度はこれまでの成果を踏まえて、受験者の回答パターンから各受験者の学習達成度を把握する方策に対して、最近注目されている機械学習の技術を導入すること模索し、その技術習得を目指した。しかし、これを実装するための処理系を準備することに時間を要し、正答・誤答に応じた解答パターンから未習得の単元を特定する実験を行うことができなかった。 なお、研究成果については、11月に杭州で開催されたHangzhou International Statistical Symposiumにおいて研究発表を行い、同じテーマを持った研究者と意見交換すると共に、3月にはRSM開発グループの一人であるDr. Curtis Tatsuoka (Case Western Reserve University, OH, USA)を訪ねて、学習診断を実現するための技術の現状や今後の展開について情報交換を行った。 これら一連の研究を通して、解決すべき課題の所在も判ってきたので、諸課題については今後も継続的に研究を遂行していく予定である。
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