研究課題/領域番号 |
15K12170
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岡田 義広 九州大学, 附属図書館, 教授 (70250488)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 教材開発 / 電子教材 / e-Learning / ICT / シリアスゲーム |
研究実績の概要 |
実際の授業で利用できるICTを高度に活用した教育効果の高い新しいタイプの教材を開発するためには,授業の実施主体である教員と学生の協力が不可欠である。本研究の目的は,教員と学生の協働のもと3DCG(3次元コンピュータグラフィックス)等のICTを活用しゲーム性を取り入れた対話型電子教材の開発と教育実践を通して,高等教育機関における教育用ゲームの開発体制の構築と教育効果の評価手法の確立を目指すものである。以下の1)~4)に関して研究開発を実施するものである。 1)教材の開発と開発体制の構築―医学研究院の教員と医学府の学生との連携により医学教育分野における3DCG等を活用したゲーム性を取り入れた対話型電子教材の開発実践を通して,電子教材開発のためのノウハウ蓄積と教材開発体制の構築を図る。 2)教材の提供体制の構築―授業内容と授業の進め方は教員により異なっており,それぞれに適した電子教材の利活用方法と提供方法を検討し,電子教材の提供体制の構築を図る。 3)教材開発プロセスの確立―教育効果の高い教材の開発には,教員が一方的に開発するものでは不十分であり,学生の意見を反映させた教材であることが望ましい。開発された電子教材を利用した講義を受講した学生の意見を収集しそれを反映して教材を洗練する仕組みを確立する。電子教材の開発自体に学生も携わることができる開発環境を整備する。 4)教育効果の評価手法の確立―電子教材を利用した授業において,その教育効果を検証することは重要である。出席率や成績変化等の数値を用いた定量的評価と,授業を実施している教員とそれを受講している学生からのアンケート調査結果を用いた定性的評価を実施し,電子教材を利用した授業の教育効果を検証する。これらの評価検証を通して,教育効果の評価手法の確立を図る。 本年度は,昨年度に引き続き1)と2)を実施した他,3)と4)に重きをおいた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記「研究実績の概要」の1)から4)の具体的進捗は以下の通りである。 1)教材の開発と教材開発体制の構築―27年度から病理学を対象にした対話型電子教材の開発を,医学部学生と情報系学生の協力のもと進めている。今年度は主に情報系学生の協力のもと,学習内容に関する設問に回答することによりゲームが進行する形式のシリアスゲーム(教育用ゲーム)の開発が行えるフレームワークの開発を行った。iPad2の他Android端末へも対応させた。病理学の他,基本情報技術者試験の問題を取り入れた教材ゲーム開発例を示した。また,文系科目(日本史学・中国文学)を対象にした対話型電子教材の開発も27年度に引き続き進めた。さらに,対話型進化計算による教材コンテンツ開発のためのユーザモデルに関する研究について論文発表を行った。 2)教材の提供体制の構築―授業実践から問題点を抽出しそれを解決することにより,電子教材の提供体制の構築を図った。27年度は,利用者端末としてiPad2を対象にしたが,本年度はAndroid端末も対象とした。M2Bシステム(Moodle(Learning Management Systemシステム), Mahara(e-Portfolioシステム), BookLooper(eBooks閲覧システム))とよぶ学内の教育システムと連携した教材の提供体制を主に検討した。 3)教材開発プロセスの確立―M2Bシステムを活用した教材開発プロセスを検討した。BookLooperの学習者ログ情報の可視化による学習者の学習過程把握と,Maharaによる学習者状況把握,それらに基づき教材コンテンツを改善するプロセスを検討した。学習者ログ情報の可視化に関する研究の論文発表を行った。 4)教育効果の評価手法の確立―3)と同様にM2Bシステムを活用した教育効果の評価手法について検討した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の29年度は,28年度に引き続き上記「研究実績の概要」の1)2)3)4)を実施するほか,研究成果の公表に重きをおく。 1)教材の開発と教材開発体制の構築―医学分野の教材開発を継続するほか,他分野を対象とした教材開発も実施する。 2)教材の提供体制の構築―利用者端末としてiPad2およびAndroid端末を対象とし、協調操作等の機能を実装し,協調学習を可能とする。 3)教材開発プロセスの確立―28年度に検討した学内の教育システムと連携した教材開発プロセスを実践し、課題抽出とそれを解決することにより,教材開発プロセスのブラッシュアップを図る。 4)教育効果の評価手法の確立―28年度に引き続き,学内の教育システムと連携した出席率や成績変化等の数値量を用いた定量的評価と,授業を実施している教員とそれを受講している学生からのアンケート調査結果を用いた定性的評価を実施し,対話型電子教材を利用した授業の教育効果を検証する。開発した対話型電子教材を用いたFlipped Classrooms(反転授業)やBlended Learning(融合学習)を実施し,教授法についての検討と教育効果の検証を行う。 以上のように,3DCG等のICTを活用しゲーム性を取り入れた対話型電子教材の開発と教育実践を通して,高等教育機関における教育用ゲームの開発体制の構築と教育効果の評価手法の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度,医学科目(病理学)を対象に開発を進めている3次元CG対話型電子教材の蓄積・配信用にサーバを導入する予定であったが,当該年度にサーバを導入する必要がなかったため本年度使用額が生じたものである。本年度,医学科目(病理学)を対象にした3次元CG対話型電子教材の開発が終了する時期に合わせ,その蓄積・配信用サーバを導入するために使用する計画であったが,既存サーバの兼用で対応した。また,日本史学・中国文学を対象にした対話型Web教材および医学科目を対象にした電子教材の開発を終了させ,電子教材の教育効果等の評価実験を行い,その結果を学会等で発表する予定であり,そのための追加旅費として使用する計画であったが,わずかな残が生じたものである。
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次年度使用額の使用計画 |
医学科目(病理学)を対象にした3次元CG対話型電子教材の開発や日本史学・中国文学を対象にした対話型Web教材の開発を終了させ,電子教材の教育効果等の評価実験を行い,その結果を学会等で発表する予定であり,そのための追加旅費として使用する計画である。
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