研究課題/領域番号 |
15K12172
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
黄瀬 浩一 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80224939)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | テーラメイド教育 / 視線解析 / アイトラッカ / 眼電位法 / TOEIC / オープンアイウェア |
研究実績の概要 |
本年度は,まず様々なセンサの試験を行った.具体的には,既に保有している高価なアイトラッカ(SMI RED-250; サンプリング周波数250Hz),安価なアイトラッカ(Tobii EyeX; 30Hz),眼電位計測(EOG)眼鏡(JINS MEME)の3つについて試験を行った.その結果,高価なアイトラッカほどではないにせよ,安価なアイトラッカでもある程度,学習時の読書行動などを計測することが可能であると分かった.具体的には,読んだ単語数の計測などが可能である.また,EOG眼鏡については,連続値を出力可能なものと離散値のみが可能なものの2通りがある.連続値が出力可能なものについてはアイトラッカと同様,読んだ単語数を計測可能である.また離散値のものについては,読書行動を行っている時間区間を推定可能である. 次に,学習プロセスとの関連付けについて述べる.本研究では,上記のアイトラッカやEOG眼鏡を用いて学習成果を計測するための基礎的実験を行った.その結果,アイトラッカを用いると,TOEICの点数を精度良く(24点程度の絶対誤差で)推定可能であることがわかった.被験者はTOEICの長文問題を3問程度解けば良い.また,さらに理解が難しい英単語の推定にも使えることがわかった.一方,EOG眼鏡については,そのような高度な処理に用いることができず,読んだ量や時間に留まることもあきらかとなった. 最後に実証実験のための機関について述べる.ITを用いた教育に理解が深い品川女子学院を訪問し,協力への承諾を得た.この他,大阪府立大学でも実証実験を実施する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はセンサの試験,学習プロセスとの関連付け,実証実験のための環境構築の3項目を実施することとしていたが,前述のとおり,これらすべてについて概ね計画した通りの成果を得て,順調に進展している.学習プロセスとの関連付けについては,特にTOEICスコアを非常に高い精度で,かつ少ない練習問題を解くだけで推定可能となった点は,予想を上回る成果であった.センサについては,まだ十分な結果は得られていないものの,廉価版装着型アイトラッカ(Pupil Labs社製)の試験も行っている.これらをもとに次年度の研究を行いたいと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,これまでに培った技術を用いて,実際に様々なセンサを用いて学習プロセスを記録し,その解析結果から,教師や学生へのフィードバックをかけることを実現する.このためのデータの視覚化手法を確立すること,実際のフィールドで安定的にデータを取得可能なシステムを構築すること,さらには,大量のデータを有効に解析するための手法を考案することなどが主なテーマとなる. なお,国際協力機関のドイツ人工知能研究センターでは,アイトラッカを用いて高校物理の能力を推定するシステムを構築している.また,フランスのラロッシェル大学では漫画を読む行為の記録と解析を行っている.これらの研究機関と協力して,さらなるデータの解析法やフィードバックの方法を考えていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
差額の大半は物品費と人件費・謝金によるものである.物品については,既に保有していた多様なセンサを用いたので,購入せずに基礎データを取得することができた.人件費については,次年度の大規模実験に向けて予算を取り置いた形である.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度には大規模実験を計画している.そのためには,今回,センサー試験に用いた多様なセンサーを,複数個,購入する必要がある.そのための費用として物品費の残りを消費する.人件費・謝金については,前述の通り,大規模実験の参加者への謝金として利用する.
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