研究課題
海洋環境における魚類の種数は3万近くにものぼり、身体の構造や泳ぎ方、縄張りや群集などの多様な振る舞いを伴うため手作業での制作は容易ではない。したがって、リアルな水中シーンを描くためには、魚の種類や、魚を取り巻く状況の変化によって生じる泳ぎ方のバリエーションを的確に再現することが重要な問題となる。本研究期間では、魚類の骨格の違いによる泳ぎ方のバリエーションや状況変化による泳ぎ方のバリエーションを統一的に再現する統一的モーションプランナーを提案した。本手法では、生物学的知見を参考に、「どこへ泳ぐか」「どのように泳ぐか」を瞬間的に決定する意思決定機構があることを魚類の遊泳に共通の仕組みと考えた。統一的モーションプランナーは2 つのステージから構成されている。第1 のステージでは、どこに泳ぐかを決める。知覚情報を統合して生成した確率分布を用いて、短期的な目標位置と目標速度を決める。第2 のステージでは、どのように泳ぐかを選択する。現在の速度帯から目標とする速度帯への遷移情報にマッチした泳法を選択する。本手法を用いることで、Manta ray やTuna、Boxfish など、サイズやスケルトンの構成が全く異なる12 種類のCG モデルや数千匹規模の魚群をリアルに泳がせる様子を示した。意思決定ルールを入れ替えることで様々な魚種の泳法を実現することができるため、既存のグラフィックスパイプラインに組み込みやすく、パラメータを調整することで動きの特徴を容易に変えることができる。さらにトルネードや旋回といった魚群全体の表現をトップダウンに指定できる特長がある。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
ACM Transactions on Graphics (Proceedings of SIGGRAPH 2016)
巻: Vol.35, No.4 ページ: 1-15