研究課題/領域番号 |
15K12182
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
加藤 知道 北海道大学, 農学研究院, 助教 (60392958)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リモートセンシング / データマイニング |
研究実績の概要 |
本年度は、高山落葉広葉林TKYサイトでPEN(Phenology Eyes Network)観測網にも登録されているHSSR分光放射計による長期的な既存の観測データ(2006ー2008年)を利用して、林冠・林床の2層の上下方向別SIFの計算を試みた。その結果は、年間の平均では、林冠から上向き、林冠から下向き、林床から上むきの順でSIF絶対値が大きかった。また林床ササが光合成を盛んに行っているであろう5月の雪解け時期には、林床のSIFが林冠のものより大きく見積もられた。さらに年間の林冠・林床上むきのSIF放出量と、既存生物量測定によるNPP及び、観測APARの林冠・林床の比が、おおよそ80:20%になるという一致をみせた。これらのことは、SIFによって森林光合成量の鉛直方向の分布を推定できるかもしれない可能性が高いことを示唆した。 また一方で、並行して行っている新規センサーによる新たな現地観測については、当初想定していた観測方式の変更を行った。そのための新センサーの試作に時間がかかり、結果として本年度中のセンサー感度検証ができなかった。そこで来年度の現地観測スタートを目指すことになった。しかしながらその過程で、新センサー作成に関わる特許申請ができたことは、非常に大きな成果であると言える。当該センサーが完成すれば、比較的安価に多点でのSIF観測が可能になり、野外における森林光合成量の空間分布に関する研究の発展に寄与できると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた新規観測装置では精度の高い測定ができないことが判明したため、さらに設計をし直し、本年度はプロトタイプのセンサーを試作するところまで行った。残念ながら現地への設置が本年度中には間に合わなかったが、次年度には観測開始が可能なように努力している。 一方で、既存スペクトルデータによるSIFの層別上下方向の分割は進んでおり、今後モデル等の導入を目指した解析を施していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は新規センサーの設置を行い、オリジナルなデータの取得を目指す。層別のSIF観測が可能であれば、これまで衛星では見ていなかった林冠から下の光合成鉛直分布を観察することが可能になるため、非常に重要である。 それに加えて、既存スペクトルデータからの、林冠・林床の上下方向のSIF放出量の日・季節・年々変化の推定をさらに進める。これによりモデルの開発や衛星精度の検証が進むことと考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、新センサーの作成に時間がかかり、結果として1セット分のみの試作品しか作成できなかったために、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の本格観測に向けて、複数のセンサーセットを作成するのに使用される予定である。
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