研究課題
世界各地から採取した宝石サンゴについて、骨軸から有機物成分を抽出して液体クロマトグラフ四重極飛行時間型質量分析装置に適用した結果、アカサンゴ及びモモイロサンゴからカロテノイド色素のカンタキサンチンを検出し化学形を同定することができた。宝石サンゴは生物種によって骨軸の色が異なるが、色素自体は同じ成分であり、白から赤までの多様性は骨軸中の含有量に依存すると考えられる。含有量が異なる理由としては、生物学的な代謝経路か、生息域における餌の違いが想定される。宝石サンゴはカロテノイドを合成できないため、その前駆物質を餌から摂取していると考えられる。次に宝石サンゴの食性を炭素・窒素安定同位体比を用いて、色素成分の起源である餌の特定を試みた。小笠原近海におけるフィールド観測では、アカサンゴとシロサンゴはPOMを含む植物プランクトンを起源とする有機物を摂食していることが明らかになった。一方、シロサンゴの室内培養において、プラシノ藻類とL型ワムシを餌に用いて人工飼育したが、シロサンゴが直接摂食する明確な証拠は得られなかった。宝石サンゴは、植物プランクトンが生産した色素の前駆物質を動物プランクトン経由で取り込んでいる可能性がある。更に、宝石サンゴ骨軸中の色素成分を識別する指標として窒素に注目し、放射光軟X線吸収分光により骨軸断面中の窒素の面内分布ならびに化学形態の分析を行い、色素分布の解析を試みた。しかしながら、いくつかの宝石サンゴ試料について実施したものの、明瞭な窒素の信号を観測することができなかった。イガイなど他の生物炭酸塩骨格では窒素の吸収スペクトルが得られたことから、宝石サンゴ骨軸中の窒素含有量は、現在の放射光分析の検出下限(100ppm程度)以下であったと考えられる。窒素を指標として宝石サンゴの色素成分の手がかりを得るためには感度向上が課題であることがわかった。
「深海のサンタクロース 小笠原の宝石サンゴ」展の実施、2016年10月1日~29日、立正大学博物館(埼玉県熊谷市)
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 3件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 図書 (3件) 備考 (1件)
Geochim. Cosmochim. Acta
巻: 202 ページ: 21-38
10.1016/j.gca.2016.12.003
Zoological Science
巻: 33 ページ: 320-336
10.2108/zs150140
J. Geophysical Res.
巻: 122 ページ: 185-199
10.1002/2016JG003587
化学と教育
巻: 34-35 ページ: 口絵4
Journal of Experimental Marine Biology and Ecology
巻: 475 ページ: 124-128
10.1016/j.jembe.2015.11.016
Geochemistry, Geophysics, Geosystems
巻: 17 ページ: 1383
10.1002/2015GC006233
Polymer
巻: 105 ページ: 368-377
10.1016/j.polymer.2016.06.016
Adv. Synth. Catal.
巻: 358 ページ: 2449-2459
10.1002/adsc.201600024
http://es.ris.ac.jp/~iwasaki/sango/