研究課題
大気中の水蒸気、降水、河川水、湖水、地下水、温泉水等といった地球表層環境に存在する水の起源や挙動を把握する上で、水の水素・酸素同位体組成は必要不可欠な指標となっている。しかし、水の起源(水や水蒸気が形成された場所や、その湿度・温度・圧力環境など)や挙動(降雨・降雪過程や再蒸発過程、起源の異なる水の混合など)といった多数の未知数に対し、水の同位体指標は酸素-18と水素-2の二つしかないため、安定同位体組成を指標に用いた水循環研究には限界があった。本研究が着目する水の三酸素同位体組成は、他の同位体指標に比べて大きく変動する過程が少なく、より明確に水の起源が反映される可能性が高い。従って、これまで酸素-18と水素-2だけでは区別できなかった様々な水の起源が、三酸素同位体組成を測定することによって、より明確に区別できるようになることが見込まれ、詳細な水循環像が得られることが期待される。そこで本研究では、水の三酸素同位体組成を、水循環の新指標として活用できるかどうかを確認した。国内の観測地点で採取された降水試料の三酸素同位体組成を定量した他、洋上大気中の水蒸気を捕集し、温度や湿度の違いによって水蒸気の三酸素同位体組成がどのように変化するのかを確認した。また、火山ガス試料中の水蒸気や火山地帯の熱水の同位体組成の定量を行い、火山活動に伴って地下から地上へ出てくる水の起源に関する知見を得ることを試みた。様々な環境における水試料中の三酸素同位体組成は、酸素-18および水素-2の同位体組成とは相関してないことが確認できたことから、三酸素同位体組成から、新たな情報を引き出せる可能性が大きいと考えられた。
http://biogeochem.has.env.nagoya-u.ac.jp
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Geophysical Research Letters
巻: 43 ページ: 11620-11627
doi:10.1002/2016GL070838