研究課題/領域番号 |
15K12189
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
横川 太一 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋生命理工学研究開発センター, 研究員 (00402751)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 海洋深層 / 海洋深層大循環 / 微生物生態系 / ウイルス叢 / virome解析 |
研究実績の概要 |
海洋生態系に生息する細菌および、それに感染するウイルス(ファージ)は他の生物を圧倒する数で存在し(細菌:1mL中に約10万細胞、ウイルス:1mL中に約100万粒子)、様々な生態系プロセスの主要構成因子として存在している。細菌のメタゲノム解析によって、細菌の系統組成や様々な機能が明らかになる一方で、それと対になるウイルス叢の解析はほとんど進んでいない。 申請者は今までの研究で、細菌群集の生物量および活性を全球レベルで観察してきた。これらの研究により、深層における細菌群集が時空間的に大きく変動することを明らかにしてきた。さらに深層における細菌―ウイルス間の量的関係が深度とともに大きく変化していることを明らかにした。これら知見をもとに海洋深層におけるvirome(ウイルス叢)解析の着想に至った。 実際には、海洋深層大循環(循環時間:1500年、循環距離:40000km)の始点(北部大西洋)から終点(北部太平洋)を構成する5水塊の中央部および境界領域におけるvirome解析を行い、海洋深層大循環に沿ったウイルス組成の遷移とその動態メカニズムを明らかにする。平成27年度は、北大西洋深層水の3点(いずれも水深2500m)、および中部太平洋深層水の3点(4300m~5300m)の試料を用いて解析作業を進めた。今回のvirome解析には、海外研究協力者が開発した少量(1ミリリットル)試料解析の新手法を用いている。 本研究の意義は、観察がほとんど行われていない海洋深層のウイルス生態系の解析に挑む点である。本研究で実施されるvirome解析の結果は、直ちに深海微生物生態系の新知見となりうる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の本研究では、海洋深層大循環を構成する水塊から6つの試料(大西洋試料3点、太平洋試料3点)を選択し解析を進めた。4工程あるうちの2工程を実施済みである。終了した行程は1)試料中のウイルス粒子を核酸染色剤で染色後、フローサイトメトリー・粒子分取装置を使用して、微生物粒子の中からウイルスのみを収集。2)分取したウイルス粒子の核酸を増幅しライブラリーを作成する。平成28年度に実施するのが次の2工程である。3)ライブラリーの配列データを次世代シーケンサーを用いて取得する。4)得られた配列データをアセンブリし、そのデータからウイルスの系統解析および機能遺伝子解析を行う。 当初の予定通り、1)の工程を海外研究協力者であるUniversity of Vienna所属のDr. De CorteとBigelow lab for Ocean Sciences所属のDr. Martinez Martinezと共同して、JJ Maclsaac Facility for Aquatic Cytometry, at Bigelow Laboratory for Ocean Sciencesにおいて行った。また、2)の工程はDr. De CorteによってFaculty of Life Science, University of Vienna, Austriaにおいて実施された。
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今後の研究の推進方策 |
試料は現在、申請者の所属に移管されており、次工程の準備を進めている。平成28年度は、上記の3)および4)を海洋研究開発機構において実施する。データ解析後は、海洋深層大循環におけるウイルス組成の変遷およびそのメカニズムについて国際学会での発表および原書論として国際誌への投稿を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
分取したウイルス粒子の核酸を増幅しライブラリーを作成する過程の実験が予定以上に順調に進み、実験試薬等の負担が減ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に実施する、ライブラリーの配列データの次世代シーケンサを用いた解析数を増やすこととし、試薬等の購入に充てる。
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