関東地方の異なる水道水源河川4河川において、農薬散布量の多い4月から9月にかけてパッシブサンプラー及びグラブサンプリングによる河川水中農薬濃度モニタリングを同時に行った。グラブサンプリングは一週間間隔で行い、パッシブサンプリングは一か月の時間加重平均濃度を推定した。水道水質基準に設定されている64農薬を対象にモニタリングした結果、いずれのサンプリング期間においても、農薬の検出数はグラブサンプリング及びパッシブサンプリングともに大きな差異はなかった。また、多くの農薬ではグラブサンプリングの一か月の平均濃度とパッシブサンプリングの時間加重平均濃度について2倍以内で一致した。一方、いくつかの農薬ではグラブサンプリングの平均値が、パッシブサンプリングの時間加重平均濃度よりも2倍以上高かった。これらの農薬の流出パターンの共通点は、一週間や二週間内の短期間のパルス状の流出をしていた点であった。そこで、グラブサンプリングの各農薬の農薬時間データの変動係数とパッシブサンプリングの時間加重平均濃度に対するグラブサンプリング単独データの比率の関係を整理した結果、比率が5倍以上の範囲では変動係数と比率の間に正の相関関係がみられた。つまり、比率が5倍以上になった農薬はすべてがパルス状の流出挙動を示すことが示唆された。以上の結果から、パッシブサンプリングの農薬モニタリングは一週間や二週間のパルス的な流出パターンでなければ、グラブサンプリングの平均値と2倍以内で一致する精度を有し、グラブサンプリング結果がパッシブサンプリングの時間加重平均濃度の5倍以上検出された場合は、パルス状の流出時のデータであることが推測できる。
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