研究課題
前年度に継続して、計測系の部品調達、アセンブル、機器制御プログラムの作成を実施した。前年度に試作した15-20ギガヘルツ帯で共振信号を起こすマイクロ波共振器系は、初期段階では比較的薄い試料(10-20mm厚)に応用するものであった.この共振器系を用いて75mm厚の氷試料の誘電率テンソルの計測に挑戦したところ、誘電率の評価に十分な強度の共振信号を取得できた.これは本研究の目的に照らして「ブレークスルー」と呼べるレベルの計測の成功であった.その後、南極氷床やグリーンランド氷床で採取されたアイスコア試料を多数用いての計測を実施した.共振器系で信号が検知できた理由を以下のように考察した.①発信信号が15-20ギガヘルツ帯であり、当初検討した30-40ギガヘルツ帯よりも低かった。これにより、定倍器を介さずに信号発生が可能になり、計測に使用できる信号強度が上がった.②同じ理由により、氷の内部でのエネルギー吸収量が小さかった。当初計画段階で挙げた反射法、透過法と比較し、マイクロ波共振法は計測の安定性や信頼性の面で圧倒的に有利といえる.共振法の成功の段階で、計測手法としては共振法ひとつに絞り混み、反射法、透過法への取り組みは共振法を上回る成果は生まないと判断した。本研究の終盤では、アイスコアを用いた計測データ量産体制の整備として共振器を更に1台製作し、計測能力を倍増した。南極ドームふじ基地等で採取されたアイスコアのマイクロ波誘電率テンソルの計測に応用し、空間分解能30mmで結晶主軸方位分布の変動に起因する計測値の変動を捉える計測に成功した。結果として、マイクロ伝搬手法を用いた低コスト・非破壊・高空間分解能の簡便な独自計測手法を世界ではじめて構築できたと宣言できる.これにより、極地氷床で積雪・フィルン・アイスコア中の変態や変形が発達する過程の理解の進展を革新することが可能になった.
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