研究課題
本研究では、重い同位体13Cと18Oからなる二酸化炭素13C-18O-18O分子の存在量が、CO2生成時の温度に”強い”依存性があることに着目し、炭酸塩(化石など)をリン酸で分解して生じる二酸化炭素を用いて、地球史解読における新しい同位体分子温度指標を開発することを目標とした。その手段として、中赤外領域に存在する13C18O18Oの吸収波長帯に発振波長を持つ最新の半導体レーザーと光計測技術による定量システムを構築を目指した。13C18O18Oは46ppbと極めて存在度が小さい。したがって、13C18O18O検出については前例がなく、HITRAN(可視域~赤外域の気体分子の吸収線データベース)の編集チームに協力を依頼することで、中赤外2235.56cm-1領域に明瞭な吸収波長帯があることを本研究で初めて明らかにした。このような状況もあり、2235.56cm-1領域を発振できる量子カスケードレーザーは市場に出ていないため、特注の必要性があったが、非常に高額であり本課題では導入することができなかった。そこで、13C18O18O吸収線の吸収強度10E-25レベルの他のCO2吸収線の検出能力を評価することで、代替の検出性能試験を実施した。使用した装置は、リアルタイム吸収分光法を用いている高感度レーザ同位体分光計(Aerodyne Research社製)で、弱い吸収線を安定して検出するために、ガス導入部をメインに最適化を実施した。その結果、炭酸カルシウムの必要量が数mg必要となるものの、吸収強度10E-25レベルの吸収線を高い繰り返し精度で計測できることが判明し、適切な波長領域を発振する量子カスケードレーザを導入すれば、13C18O18O検出が十分に可能であることを明らかにした。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Analytical Chemistry
巻: 89 ページ: 4409-4412
10.1021/acs.analchem.7b00544
巻: 89 ページ: 11846-11852
10.1021/acs.analchem.7b03582