研究課題/領域番号 |
15K12197
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
小栗 一将 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋生物多様性研究分野, 主任技術研究員 (10359177)
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研究分担者 |
清水 悦郎 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (60313384)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 地震計組み込み型海底観測ステーション / カメラ / 海底 / 底生生物 / 水中電波通信 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、地震計組み込み型海底観測ステーションを構成するカメラ・光源、シーケンサを地震計に実装し、海底の時系列撮影を行うことを目標とした。まず、カメラの実装方法を検討した。このカメラはボード部と撮像素子を分離できるため、撮像素子を3Dプリンタで作成したフレームに取り付け、これを強力両面テープでガラス球壁面に貼り付ける形とした。LED光源にも同様の構造とした。昨年度開発したタイマーとスクリプトは改良を施し、温度計で地震計内の温度を記録できるようにした。 装置は2台製作、「かいれい」KR17-04航海において、日本海溝の水深5413m、4047mの二点に設置、6時間間隔で海底を撮影した。5413m地点では2017年2月28日0:00~3月11日12:00まで、計47枚の写真および3分の動画の撮影を、4047m地点では2月28日0:00~3月18日0:00まで、計74枚の写真および動画の撮影にそれぞれ成功した。5413mの海底は泥質で、センジュナマコやクモヒトデなどの底生生物が生息し、海底は生物活動によって常に耕されていた。4047mの海底は礫質で、小型のセンジュナマコが見られた。以上より、海底地震計が予想通り海底に着底できたこと、深海底は非常に生物活性の高い環境であることが明らかになった。地震計内の温度は一定であり、5413mで1.50~1.562℃、4047mで1.375~1.437℃であった。温度センサの精度およびA/D変換器の解像度を考慮すれば、0.06℃の変化は誤差の範囲内と判断される。 水中電波通信に関しては、大容量通信の軽減化を狙い、種々の2.4GHz帯通信規格の信号を混在させ、水中の誘電体内を通す通信を試みた。結果、通信に問題のないことを確認した。また、より細く扱いやすい同軸ケーブルを誘電体でできた防水容器の外側に接触させても通信ができることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、カメラと基本的なセンサである温度計を海底地震計に実装し、深海底の現場における時系列撮影と測定に成功した。この結果から、本研究は概ね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度にカメラの撮影が可能なことを実証したので、平成29年度には、動画から定量的なデータを得るための実験を行う。具体的には、プールの底にグリッドを設置し、海底地震計カメラを用いることで撮影面積を算出する。この結果をKR17-J04航海で得られた写真に適用することで、生物のサイズや、底生生物によって耕された海底の面積などを計測する。また、誘電体を用いた水中電波通信技術を活用した、デジタルXCTDセンサとデータ受信部との通信回路を開発する。これによって、十分な精度の水温・塩分測定を可能にする真の「海底地震計観測ステーション」に進化させる。 なお、水中での電波通信に関して、電波法違反となるか、ならないかグレーゾーンであるとの指摘を受けた。電波法は機器を製造販売した者ではなく、機器を利用している者が法律違反となるため、開発した技術を利用した者が法律違反者とならないよう、平成28年度から弁護士等を交えて対策の検討を行ってきている。検討の結果、シールドルームでの計測にて電波の性質に変化がないことを実験的に示せば問題ないのではないかということになった。平成28年度内でシールドルームの利用予約ができなかったため、平成29年度に実施する予定である。また、同軸ケーブルを利用した電波通信に関しても引き続き、特性検証実験を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
カメラによる観測の実証を優先させたため、CTDなどセンサと地震計内のロガーとのリンクに関する開発箇所への予算分配が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
上記部分については、平成29年度に集中して開発を行う。研究終了までに予定通り予算を使用する予定である。
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