研究課題/領域番号 |
15K12198
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
井尻 暁 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 主任研究員 (70374212)
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研究分担者 |
池原 実 高知大学, 教育研究部自然科学系理学部門, 教授 (90335919)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | イメージング質量分析 / バイオマーカー / サンゴ骨格 |
研究実績の概要 |
平成27年度に確立した地質試料や堆積物試料のための切片試料の作成手法を用いて、サンゴ骨格や岩石試料のイメージング質量顕微鏡を用いた分析を行った。 造礁性サンゴ骨格(以下、サンゴ)はサンゴ礁の主構成物である。少量の有機物と炭酸塩で構成されるサンゴ骨格をマイクロメータースケールで観察すると、円状の石灰化中心(COC)と、その周りを取り囲む繊維状組織(Fiber)等の微細構造を確認できる。サンゴ骨格はこの微細構造が積み重なることで形成されている。有機物はサンゴの骨格形成で重要な役割があると考えられているが、COCとFiber形成にどのように関与しているのだろうか? それによって解明できるサンゴ骨格の形成機構は、サンゴ骨格を用いた古環境指標信頼性向上、高効率・効果的なサンゴの養殖方法確立等、多岐にわたる応用が期待される。これまでの先行研究は,COCとFiber間で、炭酸塩の結晶サイズがナノメータースケールで異なることや、微量元素濃度や同位体比の偏在があることを明らかにしてきた。そこでマイクロメータースケールでの低分子量有機物の骨格内分布を明らかにするため、イメージング質量顕微鏡でサンゴ骨格を計測した。分析には、事前にサンゴから抽出した脂質試料を有機溶媒とともにステンレススライド上に滴下し乾燥させたものと、ステンレススライドに直接サンゴ試料を接着剤で貼り付け、研磨した研磨薄片を試料として供し、特定の脂質が骨格内に分布している様子を観察した。これらの結果は国際学会、国内学会で発表した。その他、メッシニアン期に地中海において蒸発岩として形成した石膏中のバイオマーカーの分布を明らかにするなど、古環境解析への応用を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成28年度は、ベーリング海や水月湖で得られた縞状堆積物について、イオン化効率の高いマトリクスの選定や、質量範囲、レーザー強度、イオンモードの検討を行なった後、さらに環境指標として有効なバイオマーカーの探索を行い、本研究課題は終了する予定であった。しかし研究代表者の所属する海洋研究開発機構の業務として長期間の航海に参加したために、本研究課題の遂行に充分な時間がとれず、縞状堆積物の分析は行うことができなかった。このために研究課題の期間の終了を平成29年度に延長した。 一方で、サンゴ骨格や石膏などその他の地質試料の分析は進んでおり一定の成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
確立した切片試料の作成方法を用いて、ベーリング海や水月湖で得られた縞状堆積物について、イオン化効率の高いマトリクスの選定や、質量範囲、レーザー強度、イオンモードの検討を行う。さらに環境指標として有効なバイオマーカーの探索を行う。バイオマーカーの探索のために、GC-MSによるバイオマーカー分析を別途行い、イメージング質量分析の結果と比較する。 バイオマーカー分析は高知大学の池原実教授が分担する。 これらの基礎実験の結果をもとにベーリング海および福井県水月湖から得られた縞状堆積物の分析を行い、古環境復元への応用を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の中頃に長期研究航海が入り研究遂行の時間がとれなかたために、当初予定していたパートタイマーを雇用しての天然堆積物試料の分析が行えず、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
パートタイマーを雇用して、天然堆積物試料の包埋、イメージング質量分析器のオペレーションを担当してもらう(100万円)。その他、研究協力者との打ち合わせや、学会発表の旅費として30万円、ステンレススライドやマトリクスなど消耗品の購入に50万円、残り8万円弱は英文校閲や投稿料として使用する。
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