本研究課題は、超高時間分解の呼気港復元のために、分子量100~3000の有機分子を最小5ミクロンの高解像度でイメージングできる「イメージング質量顕微鏡」を用いて、海洋や湖沼の縞状堆積物の単相一枚一枚に含まれる環境変化の指標となる有機分子(バイオマーカー)の二次元分布をミクロン単位の高空間分解能でマッピングする手法を確立することを目的とする。 イメージング質量顕微鏡は生体試料の分析に特化して開発されたものであるため、堆積物や地質試料の分析に適した前処理方法、分析条件の最適化が必要となる。通常の生体試料の場合は、導電性のあるITOコートされたガラススライドに、ミクロトームでスライスした凍結試料を融解接着するが、堆積物試料や地質試料はミクロトームでスライスすることが難しい。また通常の地質試料は樹脂で固めてガラススライドに貼り付けた後に研磨し、研磨薄片を作るが、この方法では、ITOコートがはがれてしまうという問題もあった。このような地質試料や堆積物試料のための切片試料の作成方法について検討し、目的の分析に応じて、前処理方法を変えて切片試料を作成する手順を確立した。たとえば、炭酸塩岩試料の場合、樹脂包枚してガラススライドに貼り付けて作成した研磨薄片を一度有機溶媒につけてガラススライドからはがし、ITOコートに再接着する手法を開発し、どんな地質試料も簡単に薄片試料を作成することが可能となった。確立した手法を用いて、地中海の蒸発岩試料や中新世のメタン湧水由来炭酸塩岩中のバクテリア由来、真核生物由来、メタン菌由来と考えられるバイオマーカーの局所分布のイメージングに成功した。
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