研究課題/領域番号 |
15K12204
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
真鍋 勇一郎 大阪大学, 工学研究科, 助教 (50533668)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 放射線 / 線量・線量率 / 生体影響 |
研究実績の概要 |
実験結果の選定を行った結果、WAM理論の適用に耐えうるデータを見つけることが出来た。大きく分けて以下の2つの検討を実施した。1.がんへのWAMモデルの適用可能性の検討:放射線のリスクとしてがんリスクはは評価しなくてはいけない課題である。そこでアーミテージドールモデルに代表されるいわゆるがん多段階説の検討を実施した。その結果、段階的な微分方程式をもとにモデルを構築すれば、年齢とがんのリスクを説明可能と思われる見通しが経った。また、取り扱うデータとして、放射線の照射量とがんの発生率、死亡率等の関係のデータしかなく、多段階説の最初と最後以外の実験データは存在しない。そこで多段階説でも、比較的少ない段階を取ると思われ、なおかつ幼児期の発生が顕著な、網膜芽細胞腫、甲状腺がんのデータを今後解析することとなった。また、マウスやビーグル犬に照射する放射線の線量率を変える、分割照射を行う等の実験のデータベースがいくつかの研究機関に存在することが判明し、検討を行ったところ、これらのデータを解析し、がんの発生と寿命短縮の関係が数理モデルで説明できる見通しが立った。、2.福島の健康調査の検討:放射線とがんの関係を示す大規模な疫学データは広島長崎のLSSが知られている。一方でチェルノブイリ発電所事故の経験から、福島県では原発事故が発生し、その際に放出された放射線が小児甲状腺がんを引き起こすリスクが懸念されている。その後、福島健康調査が事故時18歳未満であった約30万人を対象に行われている。そこで我々はそれらのデータを検討し、がんの成長と時間の関係、各地の放射線量と小児甲状腺がん発生率の関係を検討した。その結果、先行調査と本格調査の傾向が異なる可能性を見出した。今後詳細な解析を更に進めることによってWAMモデルの適応対象となりえるとの見通しが立った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
放射線の線量率を変えたデータが多く見つかると期待したが、検討の結果、それほど多くのデータがないとの結論に達した。理由としては、線量率の重要性がそれほど認識されていなかったので、それを意識した実験が実施されていなかったことが挙げられる。そのため、DDREFを求めるという目的の達成は遅れることになった。ただし、年度の後半になって、マウスやビーグル犬等の大規模な照射実験が過去行われたことが判明し、それらのデータベースを使うことによって適応可能である見通しがたった。また、放射線の影響によるがんの成長の変化ということに関しては福島健康調査のデータが使える見通しがたった。
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今後の研究の推進方策 |
今後はデータベースを持っている機関との共同研究を進めることで研究が推進すると期待される。また、貴重なデータである健康調査の解析を進める。更に現在も調査が続いている福島健康調査の解析を進めるることで研究が進展すると期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
要因は3つ挙げられる 1.招待講演が多く、旅費が思ったよりも少なく済んだ。2.消耗品の購入が想定よりも少なく済んだ。3.2018年3月に大阪大学中之島センターで開催する予定の国際ワークショップの旅費にあてるために出来るだけ節約を心がけた
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次年度使用額の使用計画 |
2018年3月に大阪大学中之島センターで開催する予定の国際ワークショップの旅費(海外からの招待講演者2人分で約80万円(40万円/人)と見込んでいる。その他、WAM理論に基づいた細胞実験費用(30万円)、国内旅費(10万円)に使用する。
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