研究課題
本研究では、個葉に対する短期的なオゾン暴露実験から、樹木のオゾン感受性を評価する新規手法の開発を目的とした。今回開発したシステムは、樹木の個葉へのオゾン暴露とその純光合成速度および蒸散速度の測定を同時に行える装置であり、ガスポンプ、マスフローコントローラー、オゾン発生器、葉を収納するアクリルチャンバーCO2/H2Oモニターおよびオゾンモニター等から構成されるエアーフロー系と、光合成を行うための光源およびチャンバー冷却装置等から構成される環境制御系によって構成される。2年目となる本年度は、長期暴露実験によって日本の代表的な常緑広葉樹であるスダジイ、シラカシおよびアラカシの光合成におけるオゾン感受性の評価を行った。その結果、シラカシとアラカシの光合成機能に対するオゾンの悪影響は認められなかったが、スダジイにおいてはオゾンによって純光合成速度の低下が引き起こされた。これらの結果は、供試した3樹種のオゾン感受性に樹種間差異があることを示している。長期暴露実験においてオゾン感受性が高かったスダジイとオゾン感受性が低かったシラカシを対象として、初年度に完成させたシステムを用いた個葉に対する短期的なオゾン暴露実験を行った。スダジイの純光合成速度はオゾン暴露開始4時間後から低下し始めたのに対して、シラカシの純光合成速度は5時間後まで低下しなかった。これは長期オゾン暴露実験と同様な傾向であり、個葉に対する数時間程度のオゾン暴露によって樹木の長期的なオゾン暴露に対する感受性を評価することが可能であることを示している。さらに、得られた結果から葉に存在する気孔を介したオゾン吸収量を算出したところ、スダジイはシラカシに比べて多くのオゾンを吸収しており、そのことがスダジイにおける高いオゾン感受性を引き起こす要因として考えられる。
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