研究課題/領域番号 |
15K12218
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
小林 史尚 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (60293370)
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研究分担者 |
中村 嘉利 徳島大学, 大学院生物資源産業学研究部, 教授 (20172455)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | バイオエアロゾル / 台風 / 熱帯低気圧 / 長距離輸送 / 環境影響評価 |
研究実績の概要 |
熱帯低気圧である「台風」は、太古の昔から日本にかかわる気象現象としてよく知られている。気象庁発表などによると、年平均で26個発生し、そのうち平均で3個が日本に上陸している。最近、地球温暖化の進行にともなって、将来は熱帯低気圧(台風)の強度が強まる可能性が高いと報告されている(IPCC第4次評価報告書)。台風の上昇気流により熱帯地域の空気が吸い上げられ、日本に上陸することによって熱帯の空気塊が日本まで運ばれていると言われている。台風の上陸が顕著な台湾などにおいて、台風が運ぶエアロゾルについて種々報告されている(Fan et al., 2009)。日本においては、偏西風や低気圧によるエアロゾルの輸送についての研究が行われているが、上昇気流の強い熱帯低気圧である台風が運ぶエアロゾルの長距離輸送に関する研究はほとんど行われていない。さらに、微生物や花粉などを含むバイオエアロゾル(生物粒子)に着目した台風による長距離輸送の研究はまったくないと言っていい。 そこで本研究では、台風によって長距離輸送されるエアロゾル、特にバイオエアロゾル(生物粒子)についての実相調査と環境影響評価を実施する。申請者はこれまで黄砂バイオエアロゾルとしてタクラマカン砂漠や大気循環バイオエアロゾルとして南極昭和基地のバイオエアロゾルの直接採集と生物分析を行った経験があり、少し気象的に過酷な状況におけるフィールド調査は実行可能である。台風上陸地点(四国を設定)に行き、上陸前後の大気バイオエアロゾルを直接採集し、生物分析を行い、公衆衛生学的健康影響、生態系影響など種々の環境影響について評価を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、以下の2項目、(4)台風の進路情報をもとにした上陸地点付近におけるサンプリング、(5)フィルターサンプルからのDNA抽出および次世代シーケンス解析を計画していた。昨年度分担者中村(徳島大学)によって、台風上陸中の大気からサンプリングされたフィルターを次世代シーケンサーにて分析した。しかしながら、DNA濃度(菌体濃度)が低く、精度の高い結果が得られなかった。これは、雨台風においては乾性沈着よりも湿性沈着が多かったためと考えられる。また、本年度は台風発生数は平年並みであったが、観測地点としている徳島市に上陸したものはなかったので、(4)の上陸台風の観測はできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画は、昨年度の継続点2点に加えて、6) 解析結果の整理と環境影響評価、(7) 国民への成果発表を実施する。昨年度の継続点、(4)台風の進路情報をもとにした上陸地点付近におけるサンプリングに関しては、昨年度の結果をふまえ乾性沈着バイオエアロゾルだけではなく湿性沈着するバイオエアロゾル、すなわち雨水を採取する、(5)フィルターサンプルからのDNA抽出および次世代シーケンス解析に関しては、フィルターサンプルのみならず、湿性沈着を考慮した経時的に採取した雨水のMiSeq次世代シーケンス分析を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は台風発生数は平年並みであったが、観測地点としている徳島市に上陸したものはなかったので、(4)の上陸台風の観測はできなかった。したがって、バイオエアロゾル観測のための旅費、消耗品などが使用できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、最終年度として湿性沈着(雨水)だけでも四国南岸地域・紀伊半島南岸地域に観測地点を広げ観測を実施する。次年度使用額は、この旅費、消耗品等に用いる。
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備考 |
新聞報道:2016年8月28日,朝日新聞朝刊33面(青森面)「ひときらり 黄砂研究地域に還元 小林史尚さん」
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