研究課題/領域番号 |
15K12219
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
西田 千春 福岡大学, 福岡から診る大気環境研究所, ポスト・ドクター (00572463)
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研究分担者 |
内尾 英一 福岡大学, 医学部, 教授 (70232840)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 黄砂 / 結膜炎 / 健康影響評価 / アレルギー |
研究実績の概要 |
黄砂がヒトの健康に及ぼす影響に関する研究は、2000年代以前、国内ではほとんど行われてこなかった。しかし、近年、中国からの越境大気汚染物質がヒトの健康へ及ぼす影響についての関心が高まると同時に、黄砂の健康影響に関する疫学研究や毒性学的研究が行われ、それらの研究によって眼・鼻・呼吸器におけるアレルギー性疾患の増悪と黄砂暴露との関係が指摘されている。これまでの疫学研究では、黄砂曝露指標として、大気中粒子の質量濃度(PM10)や目視による視程観測に基づいた情報(気象庁の黄砂観測情報)、光の消散係数・偏光解消度(ライダーデータ)が用いられてきた。しかし、これらのデータには、黄砂の多面的な性質に関する情報がほとんど含まれていない。そこで、本研究では、黄砂粒子の大気濃度と共に健康影響に関係する可能性のある粒子中化学成分や浮遊微生物濃度の測定を行い、これらの測定で得られた黄砂の諸特性とアレルギー性結膜炎の病態との関係を明らかにすることを目的とし、大気観測と健康に関する調査を行う。アレルギー性結膜炎の病態の評価は、涙液中の炎症性サイトカイン濃度の測定や診察によって行う。 日本への黄砂が飛来する頻度は春季に高いことが知られているため、調査観測期間を平成28年3-4月に設定した。本研究は、ヒトから得られた検体を使用する研究であるため、福岡大学病院臨床研究審査委員会に審査を申請し承認を得た。大気観測と黄砂粒子のサンプリングは、福岡市において平成28年3月中旬より開始し、現在も継続中である(平成28年4月現在)。健康調査(涙液・洗眼液採取と診察)は平成28年4月より開始し、現在も順調に実施されているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画どおり、大気観測と健康調査のための準備が順調に行われ、平成28年3月から大気観測と涙液採取・診察などを実施している。採取されたサンプルの分析の準備も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
計画では、大気観測・健康調査期間は平成28年3-4月と設定していたが、3月には大きな黄砂イベントがなかった。4月には、ある程度濃度の高い黄砂イベントが2回観測されているが、もう少し観測数を増やしたいところである。このため、大気観測・健康調査期間を計画よりも延長して、5月中旬頃まで行う予定である。大気観測・健康調査終了後、計画通り、大気粒子サンプルと涙液サンプルの分析、データの解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
検体提供者を一般からではなく研究者から少人数の募集をしたため、検体提供者へ謝礼が不要となった。また、情報収集のために学会に参加する旅費を計上したが、開催地や出席人数が予算計上時の想定と異なったため、必要経費が予定よりも小さい額となった。以上の理由から、人件費・謝金と旅費が使用計画よりも低い額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
涙液検体と黄砂粒子中の金属成分の分析にかかる試薬や委託費用が、予算計上時の見込みよりも多く必要となる予定のため、こちらで使用する予定である。
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