本申請研究においては、重金属イオンを高感度で検出可能なセンサータンパク質のデザイン・創製を研究目的の一つとしている。平成28年度の研究では、平成27年度までに構築した発現系を用いて調製した銅イオンセンサー能を有する転写調節因子CopRの結晶構造解明を引き続き行った。Sulfolobus solfataricusおよびThermoplasma volcanium由来のCopRの結晶化スクリーリングを行ったが、構造解析に適した結晶を与える条件を見出すことはできなかった。これらCopRの高次構造を解析したところ、SDS-PAGEでは純度よく精製されており、いずれも可溶性標品として精製されているが、溶液中で凝集状態であることが分かった。このことが、結晶化がうまく進行しない原因として考えられる。そこで、抗凝集効果が期待されるグリセロール、エチレングリコール、アルギニンの添加、および塩化マグネシウム、塩化ナトリウム等を添加することにより溶液の塩強度を変化させることにより、凝集状態を解離させ、安定な二量体(生理的に機能している状態)を形成することを試みた。これら添加剤存在下において結晶化条件のスクリーリングを実施したが、結晶構造解析に適した結晶を得るには至らなかった。 本研究では、外部シグナルに応答した自発的集積システム構築のための基礎的知見として、酸素に対する走化性制御系における外部シグナルセンサーとして機能するAer2の構造機能相関解明も行った。Aer2の結晶構造解析に成功し、Aer2がN末に3つのHAMPドメインが連結したpoly-HAMPドメインを有しており、その後ろにセンサーユニットとしてヘム含有PASドメインが連結していることを明らかにした。ヘムポケットに存在するTrp残基と酸素との間の相互作用が、Aer2による選択的酸素センシングに重要な役割を果たしていることが分かった。
|