研究課題/領域番号 |
15K12223
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
新田見 匡 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 特別研究教員 (20377089)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 環境技術 / 水質汚濁・土壌汚染防止・浄化 / 反応・分離工学 / 微生物燃料電池 / バイオリアクター |
研究実績の概要 |
微生物燃料電池に嫌気性アンモニア酸化を付加した新たな下水処理法を開発することが本研究の目的である。本年度の研究実施計画は微生物燃料電池を使った下水処理実験を行い、微生物燃料電池の有機物処理性能、汚泥発生量、発電性能を調べることであった。 ・微生物燃料電池による下水処理実験 一槽型の微生物燃料電池装置を作製し、都市下水、および海水を混ぜた都市下水の処理実験を行った。微生物燃料電池に植種する微生物は、それぞれ都市下水処理施設の活性汚泥、および海水を混合した下水で馴養した実験室の活性汚泥とした。微生物燃料電池の発電性能は、出力-電流曲線、電圧-電流曲線により評価した。外部抵抗にかかる電圧より、微生物燃料電池の電流密度、出力密度を算出した。また微生物燃料電池の有機物処理性能を調べるため、微生物燃料電池流入水と同処理水の全有機炭素を測定した。 ・実験結果 出力-電流曲線解析の結果、海水を混ぜた都市下水の処理実験の最大出力密度は、都市下水のみの処理実験の最大出力密度に比べて高い値を示した。電圧-電流曲線を用いて装置の内部抵抗を算出したところ、都市下水の処理実験の内部抵抗は海水を混ぜた都市下水の処理実験の内部抵抗より高い値を示した。従って海水を混ぜることで微生物燃料電池の内部抵抗を低減し、その発電性能を向上できることが分かった。なお有機物処理については、都市下水、海水混合都市下水、の処理実験共に、安定した性能を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画は微生物燃料電池を使った下水処理実験を行い、微生物燃料電池の有機物処理性能、汚泥発生量、発電性能を調べるものであった。しかし計画していた実験に加え、海水を利用して下水の塩濃度、電気伝導度を変える実験も行い、微生物燃料電池の発電性能を向上させる知見を得ることができた。今後は海水を利用した下水処理系において、データを収集する計画である。実験の進捗を総合的に判断し、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究実施計画は以下の通りである。海洋底泥などの試料を植種源として、AX細菌の集積培養を行う。培養したAX細菌のゲノムDNA配列を調べ、潜在的な代謝を把握するとともに、微生物細胞間情報伝達機構因子、および塩濃度などの環境因子を操作した代謝活性試験を行い、AX細菌の窒素除去活性に特異的に効果のある操作因子を特定する。 1)AX細菌の集積培養:海洋底泥などの試料を不織布担体に植種し、上向流カラムリアクターに設置する。人工海水にアンモニウム塩と亜硝酸塩を添加した培地を連続供給して、AX細菌の集積培養を行う。 2)AX細菌のゲノム解読と潜在的代謝の解明:1)で集積培養したAX細菌よりゲノムDNAを抽出し、その全塩基配列を高速シークエンス解析により解読する。同塩基配列よりAX細菌が保有する遺伝子とその機能を調べ、潜在的な代謝を明らかにする。 3)代謝制御因子の探索:リアクターからの排水に含まれる低分子の有機化合物を現有のHPLCで継時的に分析・分取する。リアクターの窒素除去性能の高低に対応する化合物の増減を調べ、AX細菌の代謝活性に関与しそうな化合物の情報を得る。なおリアクターの窒素除去性能は、リアクターからの排水に含まれるアンモニウムイオンと亜硝酸イオンの濃度を比色法により測定することで把握する。 4)AX細菌の窒素除去活性の解析:集積培養したAX細菌の一部を細胞培養フラスコに移して常温での回分活性試験を行う。塩濃度の異なる環境での窒素除去活性を調べるほか、2)の潜在的代謝情報をもとに、3)で分取した化合物の添加、および各種環境因子の操作を行い、窒素除去活性を向上させる因子を特定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
応募時における初年度の計画を交付申請時に次年度の計画へと変更したため、初年度の使用額が減少し、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
応募時における初年度の計画を実施することで、当初の予算を使用する計画である。
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