研究課題/領域番号 |
15K12223
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
新田見 匡 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 特別研究教員 (20377089)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 環境技術 / 水質汚濁・土壌汚染防止・浄化 / 反応・分離工学 / 微生物燃料電池 / バイオリアクター |
研究実績の概要 |
微生物燃料電池(MFC)に嫌気性アンモニア酸化(AX)を付加した新たな下水処理法(MFC-AX)を開発することが本研究の目的である。本年度の研究実施計画は、AX細菌の集積培養を行い、そのゲノムDNA配列の解読により潜在的な代謝を把握するとともに、各種環境因子を操作した代謝活性試験を行い、AX細菌の窒素除去活性に特異的に効果のある操作因子を特定することであった。 ・AX細菌の集積培養:海洋性のAX細菌“Candidatus Scalindua”が優占する複合微生物試料を入手した。同試料をポリプロピレン製の不織布担体に塗布して上向流カラムリアクターに設置し、人工海水にアンモニウム塩と亜硝酸塩を添加した培地を連続供給して、Ca. Scalindua の集積培養を行った。培養90日頃より不織布担体がAX細菌の特徴である濃赤色を呈するようになり、アンモニウムイオンの除去率が90%を超えるようになった。また培養180日頃には亜硝酸イオンの除去率も90%程度に達し、良好なAX活性を確認するに至った。 ・AX細菌の窒素除去活性に効果のある操作因子の特定:Ca. Scalindua の集積培養に時間を要したため、実験の実施には至らなかった。来年度はゲノムDNA配列の情報によりCa. Scalinduaの潜在的な代謝を把握するとともに、微生物細胞間情報伝達機構因子、および塩濃度などの環境因子を操作した代謝活性試験を行い、低温、低アンモニア濃度条件下でCa. Scalindua の窒素除去活性に特異的に効果のある操作因子を特定する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の研究計画はAX細菌の集積培養を行い、AX細菌の窒素除去活性に効果のある操作因子を特定することであった。しかしAX細菌の集積培養に時間を要し、AX細菌の窒素除去活性の操作因子を特定するには至らなかったため、「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究実施計画は以下の通りである。1)集積培養したAX細菌Ca. Scalinduaに対して、塩濃度などの環境因子を操作した代謝活性試験を行い、Ca. Scalinduaの窒素除去活性に特異的に効果のある操作因子を特定する。2)低温、低アンモニア濃度条件下での部分硝化の方法を確立する。3)MFCにAXを付加したMFC-AXを実証する。 1)Ca. Scalinduaの窒素除去活性の解析:集積培養したCa. Scalinduaの一部を細胞培養フラスコに移して常温での回分活性試験を行う。塩濃度の異なる環境での窒素除去活性を調べるほか、各種環境因子の操作を行い、窒素除去活性を向上させる因子を特定する。 2)部分硝化方法の確立:低温、低アンモニア濃度条件のリアクターにアンモニア酸化細菌を植種し、部分硝化反応の活性を調べる。 3)MFC-AXによる下水処理実験:MFCに部分硝化リアクターと上向流カラムリアクターを組合わせた装置を作製する。同装置に下水を連続的に供給して、有機物とアンモニアの除去性能、汚泥発生量、電力回収の性能を調べる。得られた結果よりMFC-AXの下水処理性能を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗が少し遅れたことや、現有機器の再利用などにより、実験での予算の使用が減少したため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
全ての研究計画を実施することで、当初の予算を使用する計画である。
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