微生物燃料電池(MFC)に嫌気性アンモニア酸化(AX)を付加した新たな下水処理法(MFC-AX)を開発することが本研究の目的であった。本年度は昨年度に引き続き、集積培養したAX細菌Candidatus Scalinduaに対して、塩濃度を操作した代謝活性試験を行い、Ca. ScalinduaのAX活性への影響を調べた。 ・Ca. Scalinduaの集積培養:不織布担体を設置した上向流カラムリアクター(容積980 mL)によるCa. Scalinduaの集積培養を一昨年度から継続している。培養期間が800日を超えた現在も、リアクターによるアンモニウムイオンの除去率は約70%、また亜硝酸イオンの除去率も約80%であり、Ca. Scalinduaによる安定したAX活性が示されている。またアンモニウムイオンと亜硝酸イオンの消費量、および硝酸イオンの生成量の関係は、既報の量論比に近い値を示している。 ・塩濃度によるCa. ScalinduaのAX活性への影響:複数の上向流カラムリアクター(容積100 mL)を用いて塩濃度の違いによるCa. ScalinduaのAX活性を比較した。集積したCa. Scalinduaを塗布した不織布を各リアクターに浸漬し、まず塩濃度を3%に設定してAX活性を安定させた。次に塩濃度をそれぞれ0.00%、0.75%、1.50%、2.25%、2.60%、3.00%、3.50%、4.00%に設定して運転を140-150日継続した。今回の実験では、塩濃度を2.25%以上とした培養条件において、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素が約8割以上除去される結果を得た。また塩濃度が2.60%以上の条件において、AXの量論式に従った反応がおきていることを確認した。
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