研究実績の概要 |
地衣菌を担持した自己生長型ポーラスガラス吸着剤を開発するための第一段階として、金属を高濃度で蓄積することが知られている地衣類ヤマトキゴケの胞子から地衣菌を培養することに成功した。次に、培養時にセシウム添加の影響を調べたところ、ヤマトキゴケの地衣菌はセシウムを添加した培地でもコントロールの培地と同様に生長することがわかった。そこで、この地衣菌のセシウム吸着能を調べたところ、もとの地衣類と同等のセシウム吸着能があり、吸着剤としてポーラスガラスに担持するのにふさわしい種であることが示唆された。 本研究で購入したHPLC用電気化学検出器を既存のHPLCシステムに組み込み、糖アルコール分析システムを構築した。その結果、地衣類から抽出した糖アルコールを定量できるようになった。この分析システムを用いて、銅汚染が地衣類中の糖アルコールに与える影響を調べたところ、糖アルコールの1つであるアラビトールの濃度が銅濃度と負の相関関係にあることがわかり、金属汚染が地衣類に与える影響についての理解が深まった。 金属を高濃度で蓄積する蘚類イワマセンボンゴケの金属分析を行ったところ、このコケは高濃度の金属をjarositeという鉱物として蓄積していることがわかり、有害金属を回収・分離する新たな方法が見出された。 本研究で得られた成果は、日本地衣学会第14回大会、2015年7月4-5日、久留米高専に於いて口頭発表され、国際会議13th International Conference on the Biogeochemistry of Trace Elements (ICOBTE 2015), 12-16 July, 2015, Fukuoka, Japanに於いてポスター発表された。
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