研究実績の概要 |
生物学的廃水処理プロセス内の硝化菌や脱窒菌の生菌数の計測には、硝化・脱窒関連遺伝子の転写産物を標的としたfluorescence in situ hybridization法や定量RT-PCR法などの非培養的な技法が利用される。しかしながら、これらの方法は、高度な知識を要するだけでなく、操作の迅速性や簡便性と言う点で未だ問題がある。そのため現在のところ、硝化菌や脱窒菌の生菌数を正確に測定する迅速・簡便な技法は未だ知られていない。そのため本研究では、微生物の呼吸活性菌計測法で用いられている5-cyano-2,3-ditolyl-2-tetrazolium chloride(CTC)染色法とDNAアプタマーを利用することを考案した。 本研究では、まず、脱窒菌と硝化菌 (アンモニア酸化菌) の純粋株を用いて、硝酸還元反応およびアンモニア酸化反応由来のCTC還元反応の最適条件を検討した。脱窒菌やアンモニア酸化菌の違いによって、使用する呼吸阻害剤の濃度、CTC濃度およびCTC反応時間が異なるが、CTC法による脱窒菌とアンモニア酸化菌を検出する最適CTC反応条件を見いだすことに成功した。 次に、アシンメトリックPCR法を利用したCell-systematic evolution of ligands by exponential enrichment法を用いて、アンモニア酸化菌の細胞表層タンパクに特異的に結合するDNAアプタマーの探索を行った。アンモニア酸化菌に結合させたssDNAを鋳型としたアシンメトリックPCR増幅産物を確認したところ、目的とする88merのssDNA断片が増幅されることがわかった。さらに、DNAアプタマー候補の濃縮を行う必要があるものの、アンモニア酸化菌を検出可能なDNAアプタマーを得る方法論が確立できた。
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