研究課題/領域番号 |
15K12230
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
惣田 訓 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30322176)
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研究分担者 |
黒田 真史 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20511786)
池 道彦 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40222856)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アンチモン / 微生物 / 還元 / 回収 |
研究実績の概要 |
アンチモン(Sb)は、水質汚濁に係る環境基準の要監視項目に指定されているが、従来の方法では除去することが難しく、有効な処理技術の開発が求められている。一方、最近になって、液相のSb(V)をSb(Ⅲ)へと還元し、硫化物として沈殿させる微生物が報告され、低コストかつ低環境負荷なSb除去技術への応用が期待できるようになった。そこで本研究では、水中からSbを除去する微生物集積系を構築し、さらにその特徴を解明することを試みた。 100 mg-Sb/LのK[Sb(OH)6]、硫黄(S)源として2mMのMgSO4・7H2O、炭素源として2mMの乳酸を含む無機塩培地20mLに淀川の十三干潟の底泥を懸濁させ、瓶中で密封し、28℃の嫌気条件で静置培養または回転振盪培養した。硫化アンチモン(Sb2S3)に特有の橙色の沈殿物の形成を確認後、培養液0.2mLを新たな培地へ継代することを繰り返した。 集積培養の初期には、7日ほどで橙色の沈殿が形成されたものの、Sb除去率は40%程度にとどまったが、長期に渡って集積を継続したところ、90%近いSb除去率が得られるようになり、集積系の構築に成功した。Sb除去率が安定した培養系からは、16SrRNA遺伝子の解析の結果、多様な微生物が存在していることが明らかとなった。沈殿物中のSbとSの空間分布は一致し、その比率(Sb/S)は約2:3であったことから、乳酸を電子供与体、Sb(OH)6-を電子受容体とする微生物還元反応が起こり、生成されたSb(OH)3がSと反応することで形成された難溶性のSb2S3が沈殿したものと考えられる。 また、アンチモン還元細菌の候補を数株ほど分離でき、その再現性と特徴づけを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アンチモン還元細菌の集積系の構築の目標として、水中のSb(V)をSb(III)に還元し、Sb2S3 として沈殿する微生物集積系を構築すること、また、高濃度(100mg/L)の選択圧を与え、90%程度の除去率を目指し、アンチモン還元細菌を優占化させること掲げていた。この目標は達成された。 アンチモン還元細菌の純粋分離とその特徴づけでは、集積系からアンチモン還元細菌を3~5 株分離し、その特徴づけ・比較を行うことを目標に掲げていた。アンチモン還元細菌の候補を数株ほど分離でき、その再現性と特徴づけを行っており、おおむね順調に研究を水遂行している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、河川の底質試料を用いて水中からSbを除去する微生物の集積系を構築することに成功し、Sb含有廃水処理技術に応用できる期待が高まった。本研究で構築したSb還元細菌の集積系を用いたSb含有廃水の処理技術を確立することができれば、健全な産業活動と環境保全に大きく貢献することできる。しかし、本研究のSb還元細菌は嫌気条件でのみ生育し、集積系内における優占度も低いこところから、今後は、いかにSb還元細菌を系内に安定して保持するかが排水処理へ応用する際の課題となる。また、Sb還元細菌の報告例は少なく、詳細なSb代謝メカニズムも解明されていない。詳細なSb還元メカニズムが解明されれば、より効率的に実廃水処理プロセスにSb還元細菌を組み込むことが期待できる。そこで今後は、微生物集積系からSb還元細菌を単離し、その特徴付けをおこなうことで、Sb還元に関わる酵素や遺伝子を解明することで詳細なSb代謝メカニズムの解明を目指し、得られた知識をSb含有廃水処理プロセスへSb還元細菌を組み込む際の参考とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
アンチモン還元微生物の分離があと少し時間を要するため、DNA解析のための謝金、その他の経費の支出がなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
アンチモン還元微生物の分離を進め、DNA解析のための謝金、その他の経費を支出する。
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