継続している十三干潟の底泥に由来するアンチモン除去微生物の集積に加え、琵琶湖北湖(竹生島付近)と南湖(雄琴沖)、阿蘇海、若狭湾(松原海水浴場)から、それぞれ淡水、汽水、海水の底質試料を採取し、その底泥の有する生物化学的なアンチモン除去能力の評価を行った。 琵琶湖の底泥試料は、1回目の除去試験において、南湖のものが高濃度硫黄培地からSbを20%除去した。除去率は低かったものの、北湖の試料は高濃度硫黄培地において、南湖の試料は、高濃度・低濃度硫黄培地において、不定形のSb2S3に類似した橙色沈殿を形成した。この結果はSb(V)がSb(Ⅲ)に細菌によって還元され、硫化物として沈殿したことを示唆している。2、3回目の試験でも、除去率は大きくは増加しなかったものの、同様の結果が得られた。阿蘇海と若狭湾の試料は、1回目の除去試験において、高・低濃度の硫黄を含む両培地から80~90%のSbを除去した。阿蘇海の底泥試料は、低濃度硫黄培地において橙色沈殿を生じたが、その他はSb(OH)3の形成を示唆する白色沈殿を生じた。しかし、若狭湾の底泥試料は、高濃度硫黄培地においては、2回目の除去試験では橙色沈殿を、3回目の除去試験では再び白色沈殿を形成した。若狭湾の底泥試料には、Sb2S3とSb(OH)3のどちらも形成できる細菌群集が存在していたと考えられる。 琵琶湖の底泥試料の高濃度硫黄培地、阿蘇海の底泥試料の低濃度硫黄培地からは、10の3乗~10の4乗CFU/mLオーダーの黄・橙色のコロニーが得られた。阿蘇海の底泥試料の低濃度硫黄培地からは、同オーダーの白色コロニーが得られた。また、十三干潟の底泥に由来する培養系からも、橙色のコロニーが獲得できた。このことからも、底泥中の細菌がSbの除去に関与していることが示唆された。
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