平成29年度、平膜については、膜強度を測るため引張試験を行った。完全アセチル化-β-シクロデキストリン(AcβCD)を酢酸セルロース(CA,アセチル化度2.4)に20wt%分散させることで、引張強度が増加した。CA-b-AcβCD50wt%膜はCA-b-AcβCD20wt%膜に比べ、強度がやや低下したが、CA単独膜よりも高い引張強度となった。AcγCDを分散した場合も強度が増加したが、AcαCDを分散した場合ではやや減少した。伸び率に関しては、AcβCDとAcγCDをCA中に分散した膜では増加し、AcαCDを分散した膜ではほとんど変化がなかった。AcβCDやAcγCDをCA中に分散した場合に、CDは可塑剤のような役割をしたと考えられる。 次に、高い透過速度を見出すため、炭化膜の調製を試みた。まず、外径3mmφの多孔質αアルミナチューブ上にディップコートを経て、CA-b-AcβCD環状膜を作製した。この環状膜を電気炉内にて昇温速度5℃/min、500℃の窒素雰囲気下で1h焼成・炭化させて炭化膜を調製した。膜体は真空脱気後、真空法35℃において各ガス成分(He,H2,CO2,O2,N2,CH4,CF4,SF6)の透過速度(R)を測定した。炭化膜では、未炭化膜と比べてRに800~30000%の上昇があった。しかしながらSEM観察より、炭化膜表面に多くの微小欠陥が観測され、Rの上昇は測定ガスがこの微小欠陥を透過したためであるとわかった。つまり、炭化加工時に生じる微小欠陥が原因となり、CA-b-AcβCD環状炭化膜から実用的な気体分離膜を調製することは困難であると思われる。
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