研究実績の概要 |
本研究は、1,000ppmの1,2-ジクロロエタン(1,2-DCA)を5日間で副産物を生じることなしにエチレンに無毒化するジオバクターAY株について、バイオオーグメーテンション利用を想定し、簡便にバイオマスを得る培養技術の確立を目指した。実験の結果、10 Lジャーファーメンターを用いてバッチ培養で十分量培養を行った後1,2-DCAおよび酢酸のみを追加補填するフェッドバッチ培養を行う方法で、最も短期間で簡便に菌体量を確保することができることが示された。この際、培養容器内のpHが脱ハロゲン化により下がるため、7以下になった場合に6N水酸化ナトリウム溶液を自動的に添加する運転条件で培養を行った。本培養を繰り返し行った結果、接種細胞濃度3×10の9乗 cells/Lで培養開始した場合で、1L当たり最大で7×の11乗 cells/Lの細胞密度、バイオマス量として4.9×10の12乗 cellsを3-4日の培養期間で得られることが示された。 AY株の休止菌体を用い、異なる1,2-DCA濃度における1,2-DCA脱ハロゲン化速度を測定した結果をミカエリス・メンテンの基質阻害モデル式にfittingし、Ks、Kiu、Vmaxを最小二乗法により求め、増殖収率、死滅係数を、バッチ培養時の細胞密度の推移から算出した。これらのパラメータを用いた反応速度式と、フェッドバッチ培養期間中におけるファーメンター内のヘッドスペースにおける12DCAおよびエチレンをGC-FIDで測定した実測値、培養液内の細胞密度、遊離塩化物イオン濃度をイオンクロマトグラフィーにより定量した実測値とフィッティングを行った結果、12DCA、エチレン、遊離Cl濃度、細胞密度ともに、実測値と計算値がおよそ似た値を示した。これより、算出されたパラメータとモデル式により系内のバイオマス増殖が妥当に表現されることが示された。
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