研究課題/領域番号 |
15K12239
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
中村 寛治 東北学院大学, 工学部, 教授 (90382655)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | トリクロロエチレン / フェノールヒドロキシラーゼ / 蛍光タンパク質 / プロモーター |
研究実績の概要 |
トリクロロエチレン(TCE)は地下水を汚染している有機塩素化合物である。TCEは発がん性の危険性があり、早期浄化が望まれている。分解処理に関しては、嫌気性処理が既に実用化されている。一方、汚染場所の帯水層(地下水)が比較的浅く、酸素を多く含んでいる場合は、本嫌気手法を適用できない。そこで、本課題では、好気的な処理を可能にすべく、TCEで生育可能な新規好気性細菌の育種を検討する。具体的にはTCE分解能を有する酵素の遺伝子を基に、TCEを唯一の炭素源に増殖できる新規微生物を代謝工学・遺伝子工学によって育種する。H27年度は高TCE分解能を発現する遺伝子の取得を試みた。 具体的にはTCE分解能を有する6種類のフェノールヒドロキシラーゼ(PH)遺伝子を取得し、その塩基配列を決定、塩基配列の相同性を基に、4つのグループに分類した。またPH遺伝子下流に、レポーター遺伝子である緑色蛍光タンパク質遺伝子を挿入し、転写の強さを蛍光強度で測定できる系の構築も行なった。これらのPH遺伝子と緑色蛍光遺伝子は、プロモーターと共に、トランスポゾンベクターに導入し、宿主候補のCapriavidus属細菌(TCE分解過程で生ずるグリオキシル酸の資化能を有する)の染色体上に挿入し、TCE分解能を発現させることに目処をつけた。最終的に、6種類のPH遺伝子を基にTCE分解を構成的に発現する組換え体を、複数種得ることができた。それらを比較解析した結果、総合的に最もTCE分解能の高いPH遺伝子を選出できた。本遺伝子は利用したtacプロモーターによる転写が他の遺伝子より強いことが、測定された緑色蛍光の強さによって確認できた。今後は、このPH遺伝子を軸に研究を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、高TCE分解能を有する分解遺伝子を取得し、その分解能を塩基配列の解析を基に評価することが最も大きな課題であったが、それを解決できた。また、今後得られるであろう複数の宿主候補への分解遺伝子の導入法として、トランスポゾンベクターの利用についても目処をつけた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、トリクロロエチレンの中間代謝物として生産されると考えられるグリオキシル酸を資化できる宿主を選出し、なお且つ分解過程で生ずることが知られている毒性を有する中間代謝物への対処法を確立することが大きな課題となる。そこで、トリクロロエチレンと似ているビニルクロライドの資化能を有するマイコバクテリウム属細菌の宿主としての利用も選択肢として勧めていく。
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